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人間離れした、面妖な顔付き。鬼にも似たその顔と、人間の二倍はあろうかというその体躯。

戦闘部族“荼吉尼”のそれ。

「…政府お抱えの“お雇い天人”アラバル…」

知らないもなにも、つい先日幕府に行くことになった時に、俺はこの男の顔を見ている。たまたますれ違っただけだが、いい評判は聞かねぇ。

いけ好かねぇ野郎だとは思っていたが、しかしさすがにいきなり始末はどうかと…。

『コイツね、この世界のニンゲンじゃないんだ。僕らの世界から来た、悪いやつなんだよ』

悪いやつ…って、話がとんでもないスケールになってないか?そこまで思って、気づく。

「…嗚呼、そうか、テメー俺のこと馬鹿にしてんだな。大人をからかうのも大概にしろ」

話に突拍子が無さすぎて、ついに俺は邪推するのを止めた。
きっとこれは、この黄色い動物の絵空事なのだ。戦隊物のアニメでも見て、空想と現実の区別の付かなくなった子供の戯言。
そう思うとクソ真面目に相手をしていた自分が阿呆らしくなる。俺は自称異世界の訪問者の首辺りを掴んで膝から降ろ――そうとしたが、それは剣呑に瞳を細めて唸った。


『…うるせーな調子に乗んじゃねぇニンゲン。こちとら手前方の為に分かりやすく説明してやってんのが分かんねーのか』

「………」

あまりの豹変ぶりに思わず言葉を失う。愛くるしい見た目もこの時ばかりは意味をなさない。何か極道の総締めみたいな貫禄が滲んでいる。

はた、と我に返った様子のソイツは、途端媚を売るように上目遣いで俺を見た。

『…まぁ、そういうワケだから、信用して?』



いくら何でも、それは無理だろう――



……とは、結局口に出せなかった。

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