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「…ってか、勝手に寛いでんじゃねぇ」
『ぴ?』
団子を食ったそれは、次には俺の膝の上でうつらうつらと船を漕ぐ。我に返った俺は、聞かなければならないことがあったことをようやく思い出した。
「テメーなんでここに来た?ここが何処だか分かってんのか」
『ううん』
「即答!?」
それは可愛らしい様子で首を傾げる。愛玩動物のそれと変わらないくりくりとした瞳が、俺を見上げてきらきらと光る。
――鬼の副長が愛玩動物に翻弄されるような、こんな所は絶対他の隊士に見せたくない。
『いやぁ、あのね。僕もいつの間にか“この世界”に来ちゃったし、正直どうすればいいのかなーって結構困ってたんだ。で、たまたまヒジカタさんとお友達になれたから、まぁあとのことはその時になったら考えればいいかなぁって』
やっぱりコイツの中で、俺は友達として認識され――いやいや!論点はそこじゃない。
「テメー天人なのか」
『あまんと?なにソレ』
「地球人じゃねーのかって聞いてんだ」
『うーん…多分…そもそも僕、ポケモンだし』
――ますます訳が分からん。
ポケモン?初めて聞いたぞ。
『そんなことは置いといて、ヒジカタさんに聞きたいことがあるんだ』
そんなこと、と言って奴は見えない何かを脇に退ける仕草をした。割とそんなことでは済まされない気もするが、それがあまりにも可愛かったので思わずその言葉に耳を傾けてしまう。トッシーか、俺はトッシーなのか。
しかし、その愛くるしい見た目とは正反対に、そいつの口から続いた言葉は大層物騒だった。
『こーゆー人、始末したいと思ってるんだけど。ヒジカタさん、知らない?』
その言葉と共に示される、一枚のポラロイド写真。即座に罵倒してやろうと思ったソイツの意思表示に、しかし俺は反論を忘れていた。
――その写真の人物に、見覚えがあったからだ。
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