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GINTOKI SIDE

いつもよりは、だいぶ穏やかな朝だったと思う。
唐突に万事屋の屋根を破壊し、その屋根の残骸とほとんど一体化している赤髪の青年を見下ろしながら、俺――坂田銀時はぼんやりと思った。食卓をひっくり返した青年は、こちらに気付かずぶつぶつと何事かを愚痴っている。
ちょっと何なの。人様んち破壊しといてそれはないんじゃないの。ついでに俺の朝食を返せ!ホラ、神楽なんか涙目よ。

「あー…おたくどちら様?っつーか…なんで屋根から入ってくんの?玄関そんなに分かりづらい場所にないでしょ」

ひとまず青年の横にしゃがみ込んで、相手の身分を尋ねる。弁償させてやっからな!当て逃げなんて許さねーかんな!
が、そうと俺が言う前に瓦礫まみれの青年は跳ね起きて、かと思えばいきなり床に蹲った。否、これは土下座のポーズだ。

「すいまっせ――んッ!!ホント、これ…すいまっせ――んッッ!!いや、実際俺のせいじゃないんですけど、なんというか間接的に…!」

案外ノリのいい子みたいだ。ちょっと新八とキャラ被ってるし。
それにしてもそこまで低い姿勢で謝られたらこちらも怒りにくいでしょ。ちょ、俺のやり場のない怒りをどうしてくれんのコレ。

「おうおうテメコラ、せっかくの朝食が台無しじゃねーか、アン?どうしてくれんだコレ、落とし前付ける覚悟出来てんだろォなァ!?」

「ちょ…神楽ちゃん!この人だって悪気があった訳じゃないんだからそんなこと言わないの!」

そうこうしているうちに神楽と新八が騒ぎ始めた。ったくよー、アイツら本当うるさいのが好きなのな。さすがの青年の方も神楽と新八のやり取りには少々呆気に取られているようだ。もう何なのコレ、最初から何でこんなグダグダなの。

「あーもーオメーらちょっと黙れ。おいそこの君、名前は何だ」

「あ、ロイです」

「ロイな。一応屋根突き破ってくれたってことで、ちょっと部屋の片付け手伝ってくれない?あ、勿論それぐらいじゃあ銀さん完全には許しませんよ。きちんと払うモンは払ってもらうからね」

ロイは一瞬目を白黒させた。
最近の若い子は逆ギレとかするって聞くから、ちょっぴり肝を冷やしたけれど、彼は幼さの残る顔でにっこり笑って「俺に出来ることなら」と頷いた。

とまぁ、色々あって結局部屋の片付けしてるのは新八とロイだけなんだが(神楽はメシを食べている。俺はサボっている)、新八はともかくロイは文句の一つも言わずにきびきびと働いてあっという間に室内は元通りに戻った。屋根は大穴開いたままだけど。
そもそもロイは、なかなかに小柄な青年だったが、その見た目とは裏腹に新八五人分ぐらいの力があった。そういや屋根から落ちてきたのに怪我一つしてねぇな。もしかして天人か?

「あの…本当にご迷惑おかけしました。なんと言ってお詫びしたらいいか…」

片付けが終わると、ロイは部屋の隅に星座して滔々と謝罪の言葉を述べた。いやいや、こんだけ部屋綺麗にしてくれたんだし、あとは払うモン払ってくれればそれで…。

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