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その時俺たちは、重力を無視して俺たちの前で事も無げに浮いてみせている巨大な白手袋に憤っていた。憤慨していたと言っていい。
それもこれも、この無責任でいい加減な創造神の引き起こしてくれた大事件のせいである。

「いや〜、なんかね、ボタン押し間違えたら大変なことになっちゃってね」

とても大変なことになっている人間(ではないが)の発言とは思えない言い草だ。
そしてこの迷惑な白手袋こと創造神が押し間違えたボタンというのは――。

「私たちの暮らす世界の時間を動かす鍵が、色んな世界に散らばっちゃったんだ」

すなわち、今現在俺たちが生活していた世界の時間を司る重要なファクターを、紛失したらしかった。おかげで俺たちの暮らす世界の時間はピタリと止まり、動いているのは創造神の加護の元にある俺たちのみ。一体何をどう間違えたら時間が止まるようなボタンを押すことが出来るのか、この白手袋を拷問にかけて吐かせたい。

「マリオ、顔がとっても凶悪になってるわ」

俺の肩をポンと叩いて、ピーチ姫が諌めるように言う。俺は曖昧に笑って頷いた。本当にピーチ姫は人が良すぎる。こんな創造神にも慈悲をかける必要があると言うのか。

「そうだ、マリオ。マスターを殺ったところで起きてしまったことは変えられない」

フォックスまでもがそんなことを言う。俺はがっくりと肩を落としてうなだれた。そうか、この二人はマスターに慈悲をかけているのではなく、様々な事象について無理にでも納得して話を丸く収めようとしているのだ。
そんな諦めにも似た境地に到達した俺たちを見下ろす形で浮遊する創造神は、「まぁ、そんな訳で」と適当な接続詞を用いてからこう続けた。

「正常な時間を早く取り戻す為に、色んな世界に散らばった時の鍵を、探し出してきてくれないか?ま、最近ちょうど暇だったし、旅行気分で行ってきてくれればいいよ!」

まったくどこまで人をおちょくれば気が済むんだこの白手袋がァァァ!!
と、俺の怒りが爆発するより早く、俺の後ろに控えていたマルス、リンク、ロイ、アイクの剣が「ふざけるなァァァ!」という叫びと共に創造神を襲っていた。
少しだけ気分はすっきりしたが、やはり世界の時間をこのまま止めておく訳にはいかない。

やっぱり、そんな訳で、俺たちは創造神の思惑通り、各世界に散らばった、時の鍵とやらを探しに行く羽目になったのだった。

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