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更に試合は進み、いよいよ終盤に差し掛かる。彼らのダメージには20%程開きがあり、アイクの方が高ダメージだが、フォックスが軽量級である事を考えると、ダメージ差はアイクにとってそこまでの障害ではなさそうだ。

逆に言えば、フォックスからすればもう少し差をつけておきたいところである。しかしここでの焦りは禁物だ。彼もルフレと同じく戦術を練るのは得意な方なのだろう、特に焦る様子は見られない。

これが決まると致命的だ、と思われるアイクの攻撃を避ける−が、彼が選択したのは序盤で使用したシールドでのガードではなく、空中での回避だった。その攻撃を避けながら、回し蹴りをお見舞いする。

ダメージが溜まっている事もありアイクは場外まで吹っ飛ぶが、ギリギリで崖の端を掴んだ。緊迫した様子がこちらにも伝わる。

ふと、ルキナが僕の方を振り返り、疑問を口にする。


「そういえばアイクさんは、あまり投げワザを使用しないのですね。やはり決定力に欠けるからでしょうか」

「まぁ、それも一理あるだろうね。アイクは攻撃が大振りだし、投げワザからの連携も苦手そうだからその戦法は選ばないだろう。投げワザなら、一番はネスを警戒するべきかもね」


この場にはいないが、フォックスと同様に初代から組織に属するネスは、相手のダメージが溜まっている程威力を発揮する驚異的な投げワザの持ち主だ(正確に言えば、彼の超能力によるものだ)。

本人は「そこまで警戒しなくてもいいじゃない」とにこやかに言うが、その威力は最早スマッシュ攻撃並みである。メンバー間では、崖際にいる彼には要注意だ、という暗黙の了解まで存在している。

その辺の話は、今度誰かがネスと当たった時に話すとしよう。“百聞は一見に如かず”だ。


「ここまでダメージが溜まると、強攻撃でも油断はならないからね」


ようやくアイクの攻撃がヒットする。スマッシュ攻撃は隙が大きいので、強攻撃を選択したようだ。軽量級にとっては強攻撃でも十分脅威に値する。

復帰に関しては、フォックスはまだ余力を残しているようだ。しかし大きな−それこそスマッシュ攻撃でも食らおうものなら、復帰する前に撃墜されても可笑しくはない。

非公式の試合ながら、その迫力に、思わずルフレやルキナへの指南を忘れてしまいそうになる。彼らも、より一層真剣に試合を観戦していた。

その瞬間、遠くからでも分かる程、アイクの顔に後悔の念が広がった。何事か、と思うより早く、彼はフォックスのスマッシュ攻撃を食らい、星と化したのだった。



「二人ともお疲れ様。非公式とは思えないくらい、いい試合だったよ」

「…そりゃどうも。ところで、アンタらの役には立ったのか」


アイクの言葉に、「もちろんです」とルフレやルキナは大きく頷いた。それならいいんだが、と背を向ける彼に、僕は先程抱いた疑問を口にする。


「…攻撃される直前、どうして“しまった”って顔をしていたんだい?一瞬だったから、よく分からなかったんだけど」

「−尻尾にやられたんだ」

「え?」


不可解な答えに僕は首を傾げる。その時ちょうどフォックスが戻ってきたので、彼にも同じ事を聞いた。


「ああ…それは、“隙”を作ったんだよ」


彼曰く、あの時尻尾でアイクの足元を攻撃し、体勢を崩したところにスマッシュ攻撃を決めたとの事だった。僕が見たアイクの表情は、隙を作られてしまった時のものだったのだ。


「なるほどね、やっぱり君もなかなかの戦略家ってところだね。わざわざ協力してくれてありがとう」

「どういたしまして。…だけどもう、アイクとのタイマンはやりたくないかもな。そこそこキツかったぞ」

「−それは、褒め言葉として受け取ってもいいのか」


アイクの呟きに、彼は「好きなように」と答えた。でも、組織内でも強者と知られる彼がそんな感想を述べるならば、本音はきっとアイクの言ったように、“褒め言葉”なのだ。

ルフレやルキナが目を輝かせながら話しているところを見ると、僕たちの“戦術指南”も成功したと言っても過言ではないだろう。後輩の更なる成長を心待ちにしながら、改めて僕は二人に感謝の言葉を口にしたのだった。




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