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「お前はここにいたのか。姿を見ねぇと思ったら」


どんな試合になるのか興味がある、と言ったファルコも連れ会場に着くと、そこで準備をしていたロイが心配そうにそう言った。

あまり時間もないから、と手短に説明する−が、彼に頼んでおいた記録の準備が終わっていない事に気付く。

観客も入り、ランキングにも反映される公式の試合は、マスター側で自動的に記録されるらしいのだが、非公式の試合はそうではない。今後必要になるかも知れないと思った僕は記録媒体をマスターに借り、そのセッティングをロイにお願いしていたのだ。


「準備しようと思ったんだけど、どこをどう繋げばいいのか分からなくて、困ってたんだよ」

「ちょっと待って、僕もこれは分からないよ?どうしようか…」

「何だよお前ら情けねぇな。ちょっと貸してみろ」


僕たちには任せられないと思ったのか、ロイからそれを取り上げたファルコは実に器用に、機材をセットしていく。

手際のよさを見て、ロイは「ファルコが来てくれてよかった」と安堵する。アイクとひと悶着あった時はどうなるものかとヒヤヒヤしたが、ようやくそれも杞憂に終わりそうである。

下からでもその様子は見えたのだろう、アイクとフォックスが「大丈夫か」と声を掛けてくるが、心配には及ばないと返す。ファルコのお陰で、記録媒体の準備も整ったのだ。


「ところでこの“場外乱闘”は、今回どのようなルールなのですか?」


全ての準備が整ったところでルキナが律儀に質問してくるが、そういえば彼らには詳しい事を説明していなかった。

今回はストック1で、アイテムやギミックには頼る事のできない試合だ。ステージもシンプルな“終点”なので、個々の実力勝負である。


「アイテム、ギミックなしの一発勝負、ステージも平坦で隠れる場所がないならば、状況的に判断してフォックスの方が不利かな…」


早速戦況を分析していくルフレの隣で、ファルコが「それは早計だな」と自信ありげに呟く。

ロイも、「試合が進んでいけば、面白い事になるよ」と微笑む。その言葉はまるで、試合の行く末を予期しているかのようだった。



序盤は、素人でも分かるような、比較的セオリーな戦術で試合は進んだ。決定力に欠ける者は初めから勝負にいくような戦法はほとんど選ばない。

恐らくこの時はフォックスもセオリーな戦法をとっていたのだろう、遠方から隙あらばブラスターを撃ち込んでいく。威力は低いが弾速が速いため、連続して受けやすいのだ。

しかしそれは“スマブラ”において珍しく、“ひるみ”判定のない飛び道具なので、強引な突破が可能だ。アイクはダメージを受けるのを承知で、文字通り飛び込んでいく。


「アイクみたいなパワータイプの攻撃は、強力な分隙が大きい。外したりガードされたりすると、大きな痛手だ」


ロイの言う通り、攻撃を仕掛けに飛び込んでいったアイクだったが、寸でのところでその攻撃はガードされた。しかし、やはりパワータイプの攻撃は凄まじいもので、ガードしたフォックスのシールドも大きく削られ、“次”がある状態ではない。

攻撃をガードされてもなおアイクはその“次”を狙いにいくが、フォックスの蹴りが入ったのが先だった。彼がスピードに特化しているのは自身の速さだけではなく、“攻撃発生の速さ”もトップクラスに速いのだ。

低ダメージで珍しくスマッシュ攻撃による蹴りワザを選択したのは、恐らくアイクと距離を取るためだ。身を守るシールドの復旧力はそこまで早くはない。そこを計算したのだろう。


「ルキナも剣士だけれど、どちらかと言うとフォックスの方を参考にした方がいいかも知れないね。彼ほど速くなくとも、基本的にパワータイプよりは攻撃発生が速い。…それに君なら、懐に潜り込んでも安定した攻撃力を得られる」


彼女は僕と同じワザを使用するが、決定的に違うのはその“威力”だ。僕は剣先のダメージが強いため相手と距離をとる方がいいのだが、ルキナは距離に関わらず威力は変わらない。僕とはまた違った“戦法”が必要になるのだ。


「マルスと同じってんなら、無理に攻撃せずにカウンターでもいいんじゃねぇのか?」

「…いや、きっとカウンターは読まれやすい。彼に限らず、ルキナたちを相手にする人は皆、それらを警戒するだろう…」


ルフレの意見は最もだ。実際、僕たちのカウンターは警戒されやすく、実際あのような場面になるとこちらがカウンターを発動するのを見切るか、攻撃を遅らせてくる戦法をとる者がほとんどだ。

彼の言葉にファルコは目を丸くし、「テメェ、新人の割にはやるじゃねぇか…」と驚いている。ルフレは照れながら、「こういう事を考えるのは得意なんだ」と返した。


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