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TERUHIKO SIDE

いつものように学校に行って、いつものように同級生に父親のことをからかわれて、いつものようにそれを曖昧にいなして、いつものように走って家に帰る。
いつか僕の前に現れたお姉さん二人のおかげで、僕は父ちゃ…いや、母ちゃんのことを恥ずかしく思ったりはしない。友人たちの心無い言葉にも余裕を持って対応することが出来る。それでも、時々無性に悔しくなって、そんな時僕は走って家に帰るのだ。
僕の父ちゃんは、母ちゃんでもある。オカマなのだ。母ちゃんの経営するオカマバーには、やはりたくさんのむさ苦しいおっさん…もといオカマがいる。普通の人は、この見た目の厳つさとおどろおどろしさにオカマを敬遠しがちだけど、彼女(?)たちが本当はとっても強くて優しいオカマだってことを僕は知ってる。
例えば…そう。あのオカマたちは、行き倒れとなった人を放っておかない。手厚く看病してあげるし、そうする労力を微塵も惜しまないのだ。特にそれが、彼ら好みのイケメンならなおさら。

「ちょっとちょっとママ〜!その子どこで拾って来たの!?すっごくカワイイ子じゃない〜!」
「そこの往来でぶっ倒れてたのよ。アンタたち、看病してやりな」
「アタシ!アタシがやるわッ」
「あ、アゴ美ずるーい!アタシもやるぅ!」
「誰がアゴ美じゃ、アズミじゃボケェ!!」

帰ってくるなり、若いお兄さん(どうやら行き倒れていたらしい)を取り囲むオカマの群れを見せられて、僕の気分はまた数段落ち込む。悪い物を見た。
ふと父ちゃんが顔を上げて僕の帰還に気付き、優しい顔で笑った。

「あら、輝彦。お帰り」
「ただいま父ちゃん」
「母ちゃんとお呼びって言ってるでしょッ」

いつも通りのやりとりを交わして、少し元気が戻る。相変わらずオカマのみんなは若いお兄さんの身体をぺたぺたと触っているし、父ちゃ…母ちゃんは綺麗な着物を着てがに股で座ってる。何かを悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなって、すっと心が軽くなった。

そうだ、人と変わっていることは悪くない。これが僕のいつも通り。

でも、今日だけは違っていた。突然「うおッ!?」という悲鳴が上がり、行き倒れのお兄さんが跳ね起きたのだ。見ればオカマの一人がお兄さんのナニにタッチした模様。
お兄さんは目を白黒させて自分を取り巻くオカマたちを見つめ、そして一人納得したように呟いた。

「魔物か」

「誰が魔物じゃボケェェェェ!」

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