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灯火の星SS

「寂しくないの?」
上から覗き込んでそう尋ねてくるのは、ピンクの丸い異星人である。ぽよぽよと弾む彼は重さを感じさせず、僕の頭上から飛び降りる。
「マルスの仲良しな人、まだ見つかってないから。アイクも、ロイも、リンクも、ネスも」
世界が光に包まれる前、確かに僕は彼らと一際懇意にしていたと思う。勿論、今いる仲間たちと不仲な訳ではないし、孤独でもないが…と質問の意図を考えて、思い当たる。
「カービィは、寂しいのかな?」
「うん」
足元に転がる小石を蹴りながら、カービィはどこか拗ねたように続けた。
「メタがいないと寂しい」
デデデ大王はいいのか、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。それを指摘するのは野暮だろう。
そもそも、こんな話題を振られているのは、気を遣われている証拠だ。毎日ギリギリの戦いを制し、なんとか戦線を押し上げている。物量は圧倒的に劣る自軍の状況。世界を覆う雲はいまだ厚い。そんな中で先陣を切って戦う僕を、カービィは気遣っている。無理はしていないか、苦しくはないか、自分も苦しいのだから、君だって弱音を吐いていい、とそう遠回しに告げている。
大丈夫、と笑って誤魔化すことは簡単だろう。聡い友人はそれ以上の追及もしないはず。だが、そこまで歩み寄ってくれた彼にそれは失礼というもの。それに、そんな強がりを押し通す生き方は既にやめた。
「…本当のことを言うとね」
「うん」
「少し、ワクワクしている」
きょとん、と元々丸い目を更に丸くしてカービィは体を傾ける。
「どうして?」
「僕は今まで、助けてもらうばかりだった。守られて、逃がされてきた。それが今はどうだろう。早く君たちと合流できたおかげで、こんなにたくさんの仲間を救う役目を任されている」
マリオは僕の戦う姿を見て、鬼の形相だったと評した。それだけ必死に戦わねば勝てない敵であることの証左だが、それ以上に僕は自分の手で戦果を挙げたかったのだ。
「僕に誰かを救う力があること、誰かを助けるために戦えること、それがとても誇らしい」
国のために、世界のためにと清廉であることを求められてきた英雄王にあるまじき発言であることは百も承知だ。だが、この世界の僕は民のための王でいる必要もない。
カービィはぽかんと口を開けて僕を見上げていた。予想外の返答になんと返すか決めあぐねているようだった。別にフォローさせる気もない。僕は悪戯を隠すように笑った。
「みんなに内緒だよ」

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