LUNATIC
*おまけ
「アタシは、悪くナイわヨ」
開口一番、何を言うかと思えば、破壊神は悪びれる様子もなくそう宣った。さすがの創造神もその第一声には面食らって、瞠目しながら問い返す。
「…まだ何も言ってないが。後ろめたいことがあるのかな?」
「とぼケなくたッテいいワ、マスター。アンタなラあのコたちニ世界の在り方ヤ存在意義ヲ教エたがらナイだろウッて、分かッてルもノ」
創造神が無表情になって破壊神を見つめた。破壊神はにやりと口角を吊り上げて続ける。その表情は笑顔だが、放たれる殺気は明らかに怒気を孕んでいた。
「アタシはアンタが何ヲしようト、もウ文句ヲ言うつもリはなイワ。ココはアンタだけノ世界。アンタの好きニすレバいい。――でもネ」
びしりと破壊神が創造神を指差す。威嚇するようなその仕草に、創造神は僅かに後退った。
「己の力の限界ヲ知るコトよ、マスター。秩序のなイ世界をアンタが統治すルなンて、ムリ!今回は何とカ出来たケド、いつかこの世界ハ丸ごと巨大なバグになッテ、コの次元ヲ呑み込むワ」
「それは…分かっている…しかし」
「アンタがソコで渋ル理由も分カるワ。アタシだってコノ世界を“アイシテル”もノ。でも、アタシたちは何ヨリも世界ノ神。コノ世界を正しく制御する義務ガあル」
破壊神の言葉に、創造神は少しも反論出来ないようだった。しまいには完全に頂垂れ、疲れたように終点にある椅子に沈み込む。破壊神はやや呆れた――というよりは世話が焼けるといった風にため息を吐き、創造神の横にある精密機械が詰まった箱に腰掛けた。
「結論ヲ急げと言ッテるンじゃナイわ」
「――嗚呼」
「ギリギリまでアタシも付キ合ってアゲル。ソレまデに納得ノいく“終焉”ヲ用意すレバいいワ…あのコたちの為にもネ」
「…こうやって私をたき付ける為にリンクに喋ったのかね」
「そうヨ」
あまりにもあっけらかんと答える破壊神に、創造神は寧ろ毒気を抜かれて脱力した。それを見た破壊神は再びにんまりと笑みを浮かべる。しかしそれは美しく神々しさすら漂う容姿に似合った慈母の笑みではなく、獲物を見付けた捕食者のそれであった。
「…クレイジー、顔が怖い」
「アーラ、今更ね」
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