世界よ、愛しています

*ロボットの話

「なんて…なんて自分勝手な方なんでショウ…」

機体の上で激しい戦闘の音が響く中、呆れたようにそう呟いてロボットは床に落ちていた仲間のアームを大事そうに拾い上げた。向けられる謂れのない同情や憐れみなら、突っ撥ねてやろうとすら思っていた。ところが、あの王子が言うに、助けたのは自分の末路と彼の末路を重ねて見たから。なんて身勝手。なんて自己中心的。…呆れ果てて、いっそ清々しかった。

「不思議な人です、マルスさんは」

ロボットの態度の軟化をいち早く察知したか、オリマーが囁く。ロボットが答えずにいると、オリマーは困ったように笑った。

「ある時は猛々しい。ある時は弱弱しい。弱者にとても優しいときもあれば、敢えて突き放すような偽悪的な態度を取ることもある」
「…エエ」
「まるで彼の中に二人の人間がいるようですね」

猛々しく剣を振るい、指揮を執り、弱者を助け強者を挫く、伝説に轟く英雄王。
仲間を想い、誰も失うまいと必死に抗い、自分の世界を守るために必死な青年。

「彼が敵でなくて良かったですね?」

オリマーが労わるようにロボットのアームに手を重ねた。それまでロボットが感じていた憤りは、すっと溶けてなくなっていくようだった。

「…味方であっても振り回されるだけデス。本当に迷惑で度し難いお方デス…敵であった時カラ、ズット」
「ふふふ」


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