忘却の彼方に

*8

までの僕は些か悲観的過ぎた。こんなことではかつて別れたナビィやチャット、ゼルダに申し訳が立たない。
残念ながらいますぐに歩める道ではないけれど、幾ばくかの望みがある限り、僕は意義ある時を過ごすべきなのだ。

結論付けると、この旅の目的も変わってくる。今までは少しでもハイラルのことを忘れたくて、逃げるように他国へと足を運んできた。でも肩の荷が下りた今、未知の国々の旅路とは何と素晴らしい体験であろうか。子供の僕としては、一気に見聞を広げ、剣術の修行に励むまたとない機会である。


沈む気持を無理矢理押し上げ、かなりポジティブに現在の自分の状況に向き合ってみた結果、以前の魔王ガノンドロフとの戦いやムジュラの仮面との戦いの方が悲惨で望みが薄かったように思う。ただ、その時僕には頼れる相棒――ナビィやチャット――がいたが、現在は僕一人であるということが、僕の思考の視野を狭めていたのかもしれない。
だが、僕のやる気が著しく低下していたことも事実である。ムジュラという強大な敵を倒した後で疲れていたこともある。元はと言えば、それも僕のお節介な性格が災いしている。僕の性分として、余計なことに首を突っ込み過ぎる所があるが、そのせいで最近僕は人間不信気味だ。正直開き直った今でも誰かを信用するのは嫌だ。だから他人には関わり過ぎないようにしなければ。このことに関しては以後気をつけなければならない。

さて、大雑把ではあるが今後の僕の方針は決まった。
7年経つまでハイラルには近付かない。代わりに他国を旅して、来るべき日に備えるのだ。
今考えるべきはこれからどうするかだ。剣術の修行は誰かに教えを乞うべきだし、魔法も出来れば威力を上げたい。これから一人で立ち行く為に、礼儀作法の一つや二つも身につけた方がいいだろう。ありがたいことに、お金には困らない。どこの国でも草を刈ったり、モンスターを倒したりすればルピーが出てくる。どこかにタックリーはいないかな…(※ムジュラに出てくるモンスター。倒すと200ルピーゲット)。ライクライクとかドドンゴとか…。

はっ。
いけない。つい金の為に無益な殺生を強行するところだった。

まぁ、これ以上は考えても仕方がない。あとは行き当たりばったりでもなんでも構わないから、その時が来たら考えよう。今はひとまず睡眠だ。

見上げた先には満月がぽっかりと浮いている。ちょうど真南にあるから、今は真夜中か。良い子は眠る時間だとか聞いたことがある。
だが良い子だろうが悪い子だろうがお構いなしに、焚火に当たりながら月を見上げていると眠気が襲ってくる。僕の頭は一旦全ての思考を停止し、深い眠りに落ちていった。

焚火の火を消し忘れて山火事の危険があったことに気付いたのは、翌日の朝のことだった。

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