世界よ、愛しています

*とある勇者の言葉

自分以外の自分がいるというのはなんだか妙なもので、「もしかしたらあったかもしれない」第二の人生というか可能性のようなものを、しかし私は想像だに出来ないでいた。
今ある私こそが、紛うことのない私なのであって、たとえそれが「本物」を模写して創られたコピーなのだとしても、私にとって「私」はこの自分ただ一人だ。

違いますか、と問えば、それも真実だね、と曖昧な返事が返る。相手を睨み付ければ、それはおどけたように肩を竦めるような仕草をしてみせた。
曰わく、ただ君の捉え方が予想外だったもので、少し驚いていたのだ、とか。

一体、私の言った言葉のどこが不服なのでしょう、と改めて問うと、しかし彼の者はいくらか嬉しげにこう言ったのだ。



不服なものか。君がこの世界を愛してくれる、それだけで私は報われるのだから。

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