「人はルールに乗っ取ってこそ、真の自由が得られるのよ!」

会長がいつものように小さな胸(決して悪い意味ではない)をはって、どこかの受け売りのような言葉を言った。
突然そんなことを言われても正直困る、第一この生徒会に会長の言うルール、つまり校則を破る人間はいない。
深夏は文武両道の理想みたいなものだし、知弦さんも模範生(腹の中は真っ黒だが)
真冬ちゃんもゲーム機を学校に持ってきているが別に校則で禁止されている訳ではないし、授業中にBL小説を妄想しているがそれも精神の自由と言ってしまえばそれまでだ。
会長自身も実は年齢を偽っていました、とかでなければ問題はない筈だ。

「と、とにかく私の話を聞けー!」

きょとんとした表情の俺達に、会長は某銀河の妖精のような台詞を言う。
……ぶっちゃけ、それを言いたかっただけじゃないか?

「私が言いたいのは、杉崎が確実に学校であるまじきことをしているということよ!」
「えぇぇぇ!?た、確かに学校でハーレムを作ってしまったのはけしからんと思いますが……」
「そっちじゃないわよ!だいたいハーレムなんて出来てすらないじゃない!」
「嘘ぉ!?」
「何その今知りました的なリアクション!」
『相変わらず、楽しそうな漫才を繰り広げてるのね』

突然生徒会室の入り口から声が聞こえて、そちらをばっと振り向くと、そこには綺麗なセミロングな黒髪の生徒会メンバーに負けず劣らずな美少女が腕を組んで立っていた。

「ナマエさん!やっと俺のハーレムコミュニティに入る気に……」
『そんな訳ないでしょうが!』

ナマエさんが手に持っていた広辞苑の角が見事に俺の頭部に命中……絶対この人、このために広辞苑持ってきただろ!
ごほんごほん、申し遅れたがこのたった今俺にバイオレンスな愛情表現をしてくれたのは我等が碧陽学園の風紀委員長、ミョウジナマエさんだ。
この人も結構な変わり者で、本来だったらこの生徒会メンバーと人気投票で張り合えるレベルだと言うのに、「自分は絶対風紀委員長になる!」と言って皆に自分に投票しないように言って回っていたらしい(それでも結局、かなり上位だったらしいのだが)

『とにかく、私がここに赴いたのは杉崎鍵!貴方の公序良俗に反する物を没収するためよ』

いやいやいや、それってまさか。

「俺のエロゲ!?」
『当たり前でしょう』
「全年齢推奨ですよ!全く問題ないじゃないですかっ」
『エロゲとか言う時点で問題に決まってるじゃない』

そうだ、この人は横暴で有名だが言っていることは正しい。
言葉で渡り合うのは無理だと判断した俺は、少なくともナマエさんよりも理解のある(黙認している?)他の生徒会メンバーに助けを求める視線を送った。
しかし、

「ちょうどいいじゃん、大人しく没収されてろ」
「私もそろそろキー君がいない間に勝手に弄って"全員死亡エンド"にしようと思っていたところだったの」

知弦さん!?全員死亡エンドとかないですからね、そんなのスクー○デイズすらしませんからね!?
彼女なら本当にやりかねない、と身震いしながら最後の砦の真冬ちゃんにすがる。

「ま、真冬はそろそろ先輩は本物の恋をすべきだと思うんですよ!」
「まさか、それは……!」

思わぬところでフラグ立った!と思った瞬間、それは見事に地面に叩き落とされた。

「ですから、中目黒先輩と愛の逃避行……」
「なんでそうなる!」

だいたい愛の逃避行って、駆け落ちか!
真冬ちゃんに期待した俺が馬鹿だったさ。
すると、しばらく放置プレイされていたナマエさんが盛大に溜め息をついた。

『……もういいわ、このままここにいたら私も汚染されそう』

私も暇じゃないし、と言った瞬間彼女の携帯電話が鳴り響く。

『はい、私よ。日下部?何……碧陽の近くで不良が喧嘩、えぇ、今すぐ行く。私の碧陽の風紀を乱した奴等には、制裁をね』

……怖ぇ!!
電話口に嗜虐的な笑みを浮かべながら恐ろしいことを口にするナマエさんに、表情がひきつるのを感じた。
"私の碧陽"と言っていたが会長もさすがにこの状態での彼女に反論するほど肝が座ってはいないようだ。
合気道部の部長も兼任する彼女は、女子でありながらどこかのマフィア漫画の風紀委員長を彷彿させる理不尽的な強さを兼ね備えている。
この人と知弦さんが手を組んだら、余裕で地球の一個や二個滅ぼせそうだ。

『それじゃ、杉崎の件はまた今度ということで。じゃーね』

本気で、ナマエさんの怒りに触れたら次の日の朝日は拝めないんじゃないかて身震いしながら、俺達は必死の笑顔で彼女を見送ったのだった。







「今度、彼女と真剣に話し合ってみましょうかね……地球の今後について」
「止めてえぇぇ!!






後書き

やっちまった生徒会の一存\(^∀^)/
夢主のモデルは勿論あの風紀委員長殿です。
日下部はわざとです(笑)フランスパンです
イマイチ生徒会メンバー皆と絡めてなかったのが心残りです、必ず誰かが空気化……