※金造→夢主→柔蝮という構図






「柔造さんと蝮さん、今度結婚するんだってさ」

突然の話題に金造は目を瞬かせた、当然だ実の兄の結婚報告を他人からされるなんて思いもしなかった。

「それ、誰から聞いたん?」

宝生三姉妹の末っ子だと返す、彼女は一番自分と仲が良く「志摩に姉さまを取られるのは癪やわ」とか言いながら大層喜んでいた。
元々折り紙つきに仲の悪かった志摩家と宝生家だが、これを期に協力体制が深まるとこの結婚を誰もが歓迎するだろう。
強いて言えば必然的に娘を志摩に嫁に出すことになる蠎くらいか、手放しで喜べないのは。

「お前、それでええんか」
「いいって何が」
「好きやろ、柔兄のこと」

バレてたか、と笑う目の前の元同級生に金造は当たり前だと憤慨したくなった。
そもそも全く明陀関係のないお前が祓魔塾の講師にでもなるかと思っていたら突然「京都出張所に勤務させてください」とわざわざ理事長に頼んだと聞いた時点で何事かと思えば、ああそういやこの前京都で実地訓練があった時兄に会っていたなと。
悔しい話だが柔兄はモテる、面倒見が良いだとか細かいことに気がつくとかポイントが高いのだろう。
昔からことある毎に兄と比べられてきた。
見た目が似ているせいなのかと思い、京都を出て正十字学園に通い出したときには思い切って名前に準えて金髪に染め上げたものだ(勿論父親にはどつかれた)
なんや金兄、それ洒落かと笑っていた廉造も同じく派手なドピンクにして帰ってきた時にはやっぱりお前もかと大声で笑いたくなったものだ。
所詮は劣等感を勝手に抱いているだけ。
だから好意を抱いていた同級生が兄しか見ていなくても、別に驚きはしなかった。

「平気なんか、好きな男が別の女と幸せそうにしてる姿なんて見て」
「……金造に私の気持ちなんてわからないよ」

人の気持ちをわかっていないのはお前だ、と罵ってやりたい。
この際対してアプローチも出来ずにいた臆病者の自分は棚上げしてやる。

「わかってるよ、あの二人がお似合いで私の入る余地なんて最初からないくらい思い合っていることくらい」

柔兄と蝮の距離が飛躍的に縮まったのは数年前の不浄王の一件だ。
騎士團の裏切り者で悪魔落ちした藤堂に騙され加担していた蝮に最初に気づいたのは、幼馴染であり一番近くで彼女を見ていた柔造だ。
その後和尚の命により、藤堂に殺されかけた蝮を連れ帰ったのもそう。
これで惚れない女がいたら是非ともお目にかかりたいものだ。
だからこそ、蝮が明確に己の気持ちを自覚し兄と距離が縮まったのを金造は寧ろ好機だと思っていた。
これであの片想い女も漸く諦めるだろうと。

「ならさっさと諦めたらええやん、そんで東京にでも帰り」
「帰らない、私の居場所はここだもの」
「物好きやな」
「なんとでも」

成る程、阿呆この上ないことにこいつは想い人が他の女を見て微笑んでいる、家庭を作り上げていくのを横で見ているつもりらしい。

「お前阿呆やろ」
「……うっさい馬鹿」
「関西人に馬鹿言うなや」
「だって実際馬鹿じゃん、テストで一回でも私に勝ったことある?」

残念ながら事実なので言い返せない。
ああもう面倒な奴やな、と頭を掻くとその華奢な肩を掴み寄せた。
いきなり何をするのだと言いたげな視線は無視する。
やっぱり俺には面倒な問答やらは苦手だ、言いたいことはすぐに口に出すし、思い立ったが即行動。
そんな自分がよく何年も片想いなんつー女々しいことをしていたのだとある種感動した。
そしてその耳に唇を近づけ、言った。

「俺のもんになりぃ」

あまりに脈絡のない言葉に、ハァ?と呆けるのを脈アリやなとドヤ顔で笑う金造だった。







>>よくわからなくなった\(^o^)/