自分の右腕を狙うコードブレイカー達に追われる中、大神は安全圏と王子が言う学校に来て毎日と何一つ変わらぬ生活を送っていた。
本人としてはいくらでも掛かってこい、むしろ返り討ちにしてやるという心意気なのだが、話によると特にコードシーカーという者達の存在が非常に厄介とかなんとかでひとまず体制を立て直すらしい。
そんな訳で休み時間、大神が机の中に見つけた一枚のメモ。
そこには"大神君に折り入ってお話があります。校舎の裏手にある森に来てください"と一目で女性の物だと分かる筆跡で書かれていた。

(これは……)

偶然にも桜は現在八王子達に大神の警備を任せて、友人と手洗いに行っている。
チャンスは今しかない。
脇にいるクラスメイト達が「ラブレターかよ!」と騒いでいるのを無視し、足早に教室を去る。
いかにして八王子達を撒こうか考えながら。




「早かったね」
「やはり貴女でしたか、未来」

木々がざわめく中、ただ何をするわけでもなく立っている未来に、大神は気配を消すこともせず歩み寄った。

「一人で来たの?別に一人で来いなんてフレーズつけてなかったけど」
「桜小路さんがいたら色々煩いでしょう」

何故ここに呼び出されたかなんてわかっていた。
王子のように自分を守る為に戦ってくれる訳がない。
彼女にも、突き通すべき信念があるのだから。

「どうして私が君を呼び出したか言ってなかったね」

未来は手持ちにある刀の鞘を抜くと、ゆっくりと刀身を大神へ向けた。

「大神零、お前のその右腕貰い受けに来た」

そして何を思ったのか足元に置いてあるもう一本の刀を大神に投げた。

「……一体なんの真似です?」
「真剣勝負だよ、私も君も異能は使わない」

武士みたいでかっこいいでしょ、と笑う。

「貴女らしいですね」
「それは昔誰かさんが私のことを異能を持っていないと思っていたことの皮肉?」
「さあどうでしょう」
「とにかく、私が勝ったら君の右腕を持っていく」
「俺が勝ったら?」
「煮るなり焼くなり好きにすればいい」
「後悔しますよ、その言葉」

ニヤリと笑う大神に、未来も楽しげな表情になる。
そこには敵同士と違う、追う者と追われる者とも違う。
戦う者の空気が確かに流れていた。

「後悔させてみな」








≫夢主はこのような局面でもエデン側だと思います。
情には流されないということで。
本当は原作沿いに入れようと思っていたのですが、本誌で完全に遊騎に全部持ってかれてるのでIFネタで(笑)