青い海、白い砂浜。
照りつける太陽の下、水着を身に纏った刻ははぁ、と息をついた。
どうしてこうなった、と一言で言えば"仕事"である。
国家機密レベルの超極秘文書を盗み出し、更に逃亡の際に追手を何人か殺害したという今回のターゲット。
木の葉を隠すなら森の中、というのは微妙だが今の時期沢山の観光客で賑わう有名リゾート地に逃げ込んだとエージェントの調査で判明した。
そこで、犯人の抹殺及び機密文書の奪取を任されたのがコードブレイカーの刻と未来。
取り敢えずエージェントの情報でターゲットの居場所は判明したのだが、公衆の面前で始末する訳にもいかず、第一文書の在処が分からないので見張ることになった。

「にしても、逃亡中にバカンスとはネェ」
「リゾート地に来てホテルに籠りっぱなしってのも怪しいからね、周りの目を気にしてるんでしょ」

刻が座る椅子の横に、未来も腰掛けた。
自分たちも怪しまれないように、とここでは遊びに来たカップルという設定になっている。
ホテルのロビーでそれらしく未来が腕を絡ませたりして、ドキッとしたりしなかったり。
しかし現在横にいる未来の姿に刻は少し表情を曇らせた。

「……何でパーカー?」

皆が水着姿で悠々自適に過ごしている中、何故か未来は長めのパーカーを着て、ご丁寧に前のチャックもしっかり閉じられている。

「だって……エージェントが用意した水着が酷いから」

これなら学校指定の水着でも持ってくれば良かったという未来に刻は顔を引きつらせる、ちなみに現在彼女が通っている学校の指定水着はスクール水着である。

「スク水はどうかと思うけどナ」

別の意味で犯罪的な方向に行きそうっていうか、明らかに目立つ。
酷いとは一体どんな水着なのだろうか、デザインの問題か、それとも。

「もしかして、ビキニ?」

その瞬間、彼女の顔がどんどん赤く染まっていくのがわかった。
それとは反比例して、自分の顔がしまりのなくなっていくのが分かる。

「パーカーなんて着てたらさ、目立つんじゃないノー?」
「あんた人の話聞いてたの?だから脱ぐの嫌なんだって」
「でもターゲットに俺達の顔、覚えられたら困るデショ」

適当なことを並べているが、要は彼女の水着が見たいのである。
ここまで嫌がるということは、結構過激な水着の可能性もあるわけで。
だとしたらエージェントGJとしか言い様がない。
尚も拒否する未来だったが、結局刻の言葉にやっぱりこれだと目立つか…とファスナーに手を掛けた。

「に、似合ってなくても……笑わないでよ?」

ゆっくりと開かれたパーカーの中に、刻は目を見開いた。
予想以上である。

「……っ!!」

黒のビキニは、彼女の白い肌とコントラストを生み出し、普段服を着ていて分かりにくい胸の膨らみやスラリと伸びた足が如実に見えていた。

「……悪ぃ、やっぱりパーカー着テ」
「は、やっぱ変だったのか……」
「いや、似合ってる!似合ってるんだけどヨ……」

まずい、こっちの方が赤面してしまっている。
無意識に未来から顔を背ける。
とにかく思ったのは、他の男共に今の彼女の姿を見せたくないだけだった。








時間軸としては、原作前です。