職場体験




「ハア、なんでまた俺等が中学生の職場体験なんて担当しなきゃなんねーんだ」
「仕方ないだろ?近藤さんが芹沢さんに押しつけられちまったんだからよ」

警察のお仕事、なんて書かれたスライドが移り変わって行くのを見ながら永倉が愚痴を溢すのを原田が苦笑しながら宥めた。

「そもそも新八さん殆ど何もしてないじゃないですか、やった事といえば会場設営のパイプ椅子運んだぐらい」
「総司!お前も似たようなもんだろ」
「まあ、なーんにもしないで人を顎で使ってただけの土方さんに比べたら皆仕事してますよ」
「総司てめえ、ちったあ斎藤を見習いやがれ!」

いつものやり取りを繰り広げている面々に雅は中学生に声聞こえるだろ……と内心溜息をつく。
神奈川の立海大附属中の生徒達がスライドを見ている間、現場監督を任されてしまった対策室のメンバーは仕方なくその後ろの方に座っていた。
そもそも何故警視庁の職場体験に神奈川の学校から生徒が来るのか、神奈川県警でもいいじゃないかと思ったが理由があるらしい。

「なんでもその学校のある生徒の祖父が昔、警察学校の剣道講師をしていたらしくてな。そのパイプがあって今回警視庁にきたらしい」

丁寧に斎藤が教えてくれた。
剣道講師、と聞いて思い浮かぶのは厳格石頭という言葉の権現のような割と老年の(じいさんなんていった日には雷が落ちる)あの人だ。

「それってもしかして……真田の雷親父?」

藤堂の言葉に皆があーと懐かしげな顔になった。
対策室の面子は皆あのじいさんの教えを受けている。
しかもそもそも皆部活でかなり鍛えていて、結構な腕前だったために余計燃え上がらせてしまったようで死にそうになったとか。

「真田のじいさんってそういや手塚のじいさんと仲悪かったよなー、まさに犬猿の仲って感じで」
「でも一緒に釣りに行ってるの見たことあるぜ?」
「ライバル的な?」
「そんな感じじゃね」




「フフッ、まさに今の真田と手塚みたいだね」
「………」

こそこそと聞こえてきた声に幸村は可笑しそうに笑い、真田はプルプルと拳を震わせた。
そもそも自分の祖父や手塚の祖父の話題をしている以前に、こういう場で平然と私語をしているのはいかがなものか。
注意してやりたいという衝動に駆られたが、相手は自分よりもはるかに年上だし(幸村が「隣に立っても多分違和感ないよね、一緒に働けそう」とまた笑った)どうしたものかと思っていたところでその一団の中で一番偉いらしい男性が「静かにしろ」と注意したので大人しく意識を前に戻した。

「でもあの人滅茶苦茶イケメンっすよねー」
「さっき中を案内してた交通課の婦警も「キャッ、土方さん!」とか頬赤らめて言ってたナリ」
「切原君に仁王君、そういう話は今すべきじゃありませんよ」



「学生時代っつったら土方さんかなりモテモテだったよなー」
「でも近寄りがたいオーラ出てなかったか?」
「それでもイケメンに女子は群がるんだよ」

キイィィ!と永倉がリア充爆発しろ!と睨み付けるのを「リア充じゃねーよ」と涼しい顔で受け流す。
と、沖田が面白いことを思い出したかのように口を開いた。

「そりゃあモテモテでしたよねー、なんせ実家にもててもてて仕方ないんだけどどうすりゃいいんだみたいな自慢の塊のような手紙送ってましたもんねえ?」
「お前、なんでそれを……!」
「……土方さん、なんでそんな黒歴史の塊みたいなことしてるんですか」
「当時疲れてたんだよ!」

土方がガクッと項垂れた。
ちなみに何故沖田がその事実を知っているかと言えば、土方学生時代で親元を離れいていたとき沖田はまだ小学生で件の手紙を受け取った土方の姉が爆笑しながら読んでいたのを聞いたからだ。
それを聞いて土方は「姉貴……!」と遠くに住む実の姉によりによってなんで総司にと恨み言を言った。

「まあ仕方ないって!そんな手紙送っちゃったり、意味不明な短歌書いて土方さんのファンに「こ、個性的で素敵だね!」ってフォローされてもイケメンなら大抵許されるんだよ!」
「お前らもう黙れ!」




「……残念なイケメンだったな」
「……ああはなりたくないぜぃ」







本編で絡んでないので直接は接触しませんでした!
リクエストしてくださった方、ありがとうございました。


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