類は友を呼ぶ


定時の仕事が終わり、電車に揺られながら自宅へと向かっていた時のことだ不意に携帯電話が着信を告げた。
ちょうど降りる予定の駅でプラットホームに降り立った後、一体誰だと名前を見ればディスプレイには"永倉新八"の文字が。
確か今日は藤堂にも原田にも断られて一人寂しくやけ酒とか行っていたが、まさかこれからお前も来いとか突然言い出すんじゃないかと思いながら通話ボタンを押せば聞こえてきたのは聞き慣れた声とは別のものだった。

《あのー、白鳥さん?》

一体誰かと不審に思えば割と最近聞いたような声で懸命に記憶の糸を手繰るが、その前に本人が名乗った。

《越前リョーマです》
「越前君?どうして新八さんの携帯から越前君が電話を」
《少し言いにくいんだけど》

そう言いつつも越前は丁寧にどういう経緯で永倉の電話からかけてくることになったのか説明した。
そもそもの発端は越前の父親である越前南次郎と永倉が青春台にある某居酒屋にて、意気投合してお互い酔い潰れるまで湯水のように酒を飲んだことに始まる。
南次郎はその店の常連であり、今までも何度か同じことがあったためすぐに越前家に連絡が行き、息子のリョーマが渋々迎えに行った。
しかしもう一方の男は今日初めてこの店に来たらしく、どこの誰なのかもわからない。
一体どうしたものかと悩んでいたところで永倉の上着のポケットに入っていた携帯を少しばかり拝借して最近に通話した人の名前を見たところ、割と上の方に越前が見知った名前があったのだ。
越前の説明に頭が痛くなる。
大の男、しかも警視庁の刑事が居酒屋で酔い潰れて他人に迷惑をかけたなんて土方にバレたら怒鳴り散らされる程度で済んだら運がいいくらいだ。
自分もとんだとばっちりだと思いながらも、土方の名前が上の方にあったら実に悲惨なことになっていただろうなと思いながら越前からその居酒屋の場所を聞き、青春台に向かう電車に乗り直すために歩き出したのだった。








「努力に勝る成果はなし!……古今東西の変わらねぇ事実だと思ってたっていうのによお、最近の奴等と言ったら」
「そーだそーだ、まるで努力っていう言葉を知らねえ!」

お前らは定年退職間際のやさぐれたサラリーマンか、と突っ込みたくなった。
越前も冷めた目で酔っ払い二人の盛り上がる会話を遠巻きに眺めている。
間違いなく今が他人のフリをしたくなる瞬間なのだろう。
だがこの酔っ払いのせいで帰宅時間が遅くなることも非常に癪なので、さっさとタクシーに詰め込んで帰らせてもらおうと声をかける。

「ったく、プロファイリングだか何だか知らねーがそんなんで犯人が特定出来たら刑事いらねっつーの!」
「ほら新八さん、店の人に迷惑ですから帰りますよ。それからファイリングはアメリカでも認められてるんですから文句言わないでください」

酒臭いと顔を歪めながら立たせようと腕を引っ張る。

「大体総司の奴も、あっさり剣よりも極めるなんてあんなおっかねえものに手ぇ出しやがって。男なら肉体と剣がありゃ十分だ!」
「総司の技術は上層部も一目置いてるんですから、新八さんも頭はあるんだからちゃんと使ってください」

酔っ払いの対応をしつつもしっかり言い返している雅に、この問答はいつまで続くのかと越前は不安になる。
そろそろどうにかなってくれないと明日の朝練に響くんだけど、と溜息をつきたくなっていたところで雅が最終兵器「土方さんに言い付けますよ」を発動してようやく永倉も渋々ながら帰ることにしてくれてホッと安堵した。

「よおー久しぶりに腹切って話せる奴がいて良かったぜー、また飲もうなー」
「おう、南次郎ー」

年不相応に手を振り合っている男二人に、お互い世話は大変だなあと何も言わずとも思っていたのだった。

結局南次郎はリョーマの母に、永倉は翌朝二日酔いで土方にこってり絞られたのだった。









>>オチも何もない話。南次郎氏は小ネタで使いやすいです。


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