03

本来護衛対象であり、保護のために訪れたまさにその時にその対象が殺害されてしまった。
後で上層部に土方が呼び出され小言を言われ、更にそれによって土方が不機嫌になり結局とばっちりがこっちにも来てしまうんだろうなと憂鬱に思いながら死体に近寄る。

「一刺しで心臓をグサリ、鮮やかですね」
「犯人はどんな奴だ」
「攻撃的でかつ理知的、かなり厄介です」
「そうか……」

土方が眉間を強く押さえる、本人もこれから署に帰ると説教フルコースなのが目に見えているに違いない。
とにかくこの場をどうにかしなくては先程から「西郷先生が殺されたんだって!」「嘘、マジで!?」と声が聞こえてきて更に野次馬が増えてきてしまっていることは間違いなかった。
その時死体の側にしゃがみ込み黙っていた藤堂がちょっと、と呼ぶので何か用かと近づく。

「どうしたの?」
「多分俺の見立てなんだけど、死亡推定時刻は午後四時二十一分前後。それから犯人は身長百五十センチ程度」
「土方さん!」
「何だ、二人して」
「私がこれから言うことを大声で復唱してください、ここに集まってる野次馬全員に聞こえるくらいの音量で……考えがあります」
「わかった、白鳥お前の言う通りにやってやる」

たった今藤堂が述べたことをそのまま、少しだけ付け加えて土方に耳打ちする。
そして土方はそれを大声で繰り返した。

「犯行時刻は午後四時二十一分前後、犯人は身長百五十センチ程度!これからその時刻にどこに誰といたか申告が済むまで誰一人ここから出ることは認めない!……斎藤よろしく頼む」
「了解いたしました」

斎藤は一礼すると近くにいた教師に申告の場を設けさせるよう言う。
放課後だがこれだけ生徒が残っているのだ、かなり大変な作業だがウチで一番このような事務的な作業に向いているのは斎藤であり彼ならスムーズに事を運んでくれるだろう。

「あの、今の様子見ただけでそんなことまでわかったんスか?」
「君達も来てたの」
「緊急事態だと判断しましたから」

青学のメンバーも野次馬に混ざって、いつの間にかその最前列に顔を出していた。

「犯行時刻は血液の凝固具合ね、グラム秒単位で変化していくから。それからほら犯人はナイフを被害者の背中に投げ捨ててるでしょ?その時にナイフについた血が慣性の法則で前方に飛び散ってるからそこから背格好やらを三平方の定理で弾き出したってわけ……といっても私自身も原理はわかるけど実際に出来る気はしないけどね」
「……やっぱり人って見かけによらない」
「失礼だなオイ」

藤堂が越前にジト目を向けるが本人は帽子を深く被り直しただけだった。

「悪いわね、この状態じゃ練習試合どころではなさそう」
「仕方ないでしょう」
「とにかく君達はその時間まだ校舎内に入っていなかったんだし、ずっと団体行動だったんでしょうからアリバイもしっかりしてる。さっさと斎藤君のところで申告してき方がいいと思うよ?」
「では、お言葉に甘えて」
「殺人の現場ってのはここか、あーん?」

その時、廊下の向こう側から声がしたかと思うと突然人垣がサッと避けて道が出来る。
一体何事かと目を瞬かせているとそこからジャージに身を包んだド派手な印象を与える少年が姿を現した。

「君は?」
「警察か……俺様はここの生徒会長だ」

警察相手にすっごい態度だなオイと若干引き気味に見ていると、青学メンバーがうわあという表情になる。

「えっと、知り合い?」
「彼は氷帝の生徒会長であると同時にテニス部の部長なんです」
「手塚、君もね」

成る程、青学の面子はこの派手部長率いるテニス部と練習試合のためにここに訪れていたのか。
そこで雅はあることを思いついた。

「氷帝の生徒会長君」
「跡部だ」
「じゃあ跡部君、生徒会室にあるパソコン少しいじらせてくれない?」
「……?」
「さっきウチの刑事が犯人の背格好を特定してくれたもので、全校生徒の身体測定のデータあるでしょう?」
「ああ、それなら今日生徒が校門を通過した時間もセキュリティでわかるようになっている」
「助かる、ちなみに跡部君君は四時二十分前後どこにいた?」
「テニスコートだ、レギュラーも全員な」
「了解、ってことでいいですよね土方さん」
「ああ、平助は斎藤の手伝いに行かせる。俺はここで現場の指揮をしているからな」

青学メンバーとも別れて跡部と連れ立って生徒会室を目指すため廊下を歩く。
と、そこへ廊下の向こう側から「跡部!」と声をかけてくる跡部と同じジャージを着ている少年が二人。

「西郷先生が殺されたって噂マジかよ!?」
「ああ、事実だ」
「……そちらのお嬢さんは?」
「刑事だ」

お嬢さんって。
明らかに中学生(といっても手塚や跡部同様少し疑いたくなる程大人びているが一応氷帝中等部にいるので)であるはずの丸眼鏡の少年にお嬢さん呼ばわりされて思わず口元が引き攣る。
丸眼鏡の関西弁少年、忍足及びその隣で飛び跳ねるオカッパ頭の少年向日は物珍しそうに雅を見た後「今日の部活は中止だから伝えてこい」という跡部の言葉にいそいそと戻って行った。
手を振りながらというオプション付きで。

「丸眼鏡のことは気にするな、あれがデフォルトだ」
「……あのさ、君達私が大人だってことを忘れてるよね」
「別に忘れていねーが?」
「あ、そう……」

間もなく生徒会室の前に到着する。
流石氷帝学園の生徒会室、予測はしていたが最新モデルのパソコンに対策室のとは桁が違うレベルの高価そうな家具が並んでいる、ぱっと見どこぞの会社の社長室だ。
早速使わせてもらおうとしたところで不意に携帯電話の着信メロディが流れる。
捜査中でいつ連絡が入るかは分からないが、なんとなくバツが悪く先に中でパソコンの電源を入れている跡部の様子を窺うが別段気にしていないようなのでその場で出ることにした。

「総司?」
「山南さんが一つわかったことがあったから、一応報告。土方さんにもかけたんだけど立て込んでて出なかったから」

僕が嫌なのを仕方なくかけたっていうのに出ないってホント土方さんらしいよねと悪態をつく沖田に「ハイハイ」と適当に相槌を打って切る。

「跡部君一つ質問があるんだけど」
「何だ」
「氷帝の女子の洋服についてなんだけど、大丈夫?」
「俺様に知らないことはないからな、問題ない」









>>氷帝陣敬語使うと若干キャラ崩壊しそうなので。


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