「リンちゃーん!」
『エ、エニシダさん?』

漸くカイナシティの港に到着し、船を降りて警官に事情を説明した。
最初は一青年、つまりNが船を操縦してここまできたということに納得のいかない表情をしていたものの、一応ホウエンではチャンピオンとしての経歴がある(無論放棄したが、殿堂入りしたという記録は残る)ので、それを示したらすごい勢いで深々と頭を下げた。
チャンピオンの肩書き半端ないな。
当事者達よりもロケット団復活という情報にナーバスになっていたらしく、港を後にする際警官の一人が「どうして悪の秘密結社ってのは次から次へと活動を始めるんでしょうかねぇ」と溢すのが耳に入る。
私だって聞きたいよ、旅をする度に旅路を邪魔してくるんだから。
すっかり空も暗くなってしまったし、今日はポケモンセンターに泊まろうということになりロケット団との戦いでお疲れ気味のピカチュウ達をジョーイさんに預ける。
さてシャワーでも浴びてゆっくり寝ようか、結局豪華客船に乗ったのに全然満喫出来なかったしとポケモンセンターの奥に向かおうとすると、不意に大声で自分の名を呼ぶ声がして話は冒頭に戻る。

「ああ良かった良かった!事情聴取が終わって外に出たら、もうとっくにリンちゃんが行っちゃったって聞いたからさ。もしかしてポケモンセンターに泊まってるかなと思って慌てて来たんだよ」
『事情聴取って……エニシダさんも船に乗ってたんですか?』
「そうそう、リンちゃんイッシュでも殿堂入りしたんだろう?お祝いに君の知り合いのアララギっていう研究者にあの船のチケットを渡してくれって送って、是非ともまたバトルフロンティアにと誘おうと思ってたんだよ」

でも君を訪ねようと思った矢先にロケット団が押し入ってきて残念だったよー!と饒舌に話すエニシダに納得。
成る程、アララギ博士の豪華客船チケットの出所はここだったのか。
しかも後半完全に欲ただ漏れだったし(きっとチャンピオン現る!とか謳い文句で客寄せに使うに違いない)

「そうだそうだ、もう一つ聞きたいことがあったんだけど、黄緑色の髪の青年…ロケット団に絡まれてる所を助けてくれたんだけど、彼君の知り合い?」
『ええ、まあそうですけど……』
「やっぱりねー!連れてたポケモンがリンちゃんのサーナイトだったからさ、彼中々の腕前だけどポケモン持ってないのかな」

一人で勝手に盛り上がり出すエニシダに、こっそり溜息。
この人目が完全に私と初めてあった日くらいに輝いてるよ。
そういえばあの時はいきなり話し掛けて不審者かと思って、滅茶苦茶警戒したなあと思い出す。

「もしかしたら、彼チャンピオンに挑める才能があるかもしれないねぇ!」

すみません、もうチャンピオン超えてます(イッシュだけど)

それから漸くエニシダとの会話を切り上げて、寝室に向かう途中向こう側から歩いてくるNの姿が目に入った。

「随分話してたけど、あの人知り合いだったの?」
『うーん、まあ一応』
「船で会ったとき、なんか目を輝かせてこっち見てたからちょっとびっくりしたんだよね」

完全に目付けられてるから御愁傷様、という訳にもいかずあははと笑って誤魔化すしかなかった。

「ああ、それから」
『どうしたの?』
「さっき君のポケナビ、けたたましい音で鳴ってたよ」
『ちょっ、先に言え!』









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