船長室は思いの外早く見つかった。
巨大な豪華客船であるが、中の構造は至極単純で真っ直ぐに客室や食堂などを駆け抜けて行くと、前方に船長室というプレートがかかっていたのだ。
上の階で同様にロケット団を片していたNとも途中で合流し、船長室の前にいた見張りのしたっぱ二人を倒すと、リンは勢い良くドアを開いた。
『な……っ』
そこで目に入ったのは船長室の片隅で気絶している上に縛られて転がされている船員達。
そして何食わぬ顔で船を操縦しているロケット団員。
「……来たか」
『その様子だと私達のこと把握してたみたいね』
「巡回用のズバットを放っていたからな」
その雰囲気そして余裕さにその男が船ジャックの首謀者、更にはロケット団でも幹部クラスだと分かった。
悠然と男は話す。
「アポロ様が正式にロケット団の解散を表明し、沢山の同胞が逮捕されロケット団は本格的に消滅の危機に晒された」
ラジオ塔から逃げのび、集まったもの達もしたっぱばかりの烏合の集団。
「だがクロン様が我等をまとめてくださったのだ」
サカキを思い出させるようなカリスマ性。
二年間という時を経てここにロケット団は復活した。
「何の因縁か二年前俺達の邪魔をしてくれた小娘が乗っていたのは予想外だったがな」
『あんた達みたいな自分達の悪事を正当化して他人に押し付ける奴等は何度でも潰してやるわよ』
「ふ……出来るものならな」
「ピカッ!?」
『ピカチュウ?』
その時突然見えない何かがピカチュウにたいあたりを食らわせた。
予期せぬ攻撃にたいあたりをまともにものの、ピカチュウはなんとか持ち直し、見えない何かに威嚇の態度をとる。
「トモダチ、だね」
ポケモンと心を通わせる力を持っているだけに、初めて見るポケモンであるがその場所を見抜き、今度はサーナイトに攻撃しようとしてくるところを避けるように言う。
『姿の見えないポケモン……』
「どうした、避けているだけでは倒せないぞ」
『煩い!』
男の余裕な声に苛立ちながらも記憶を手繰り寄せる。
以前にホウエンを廻っていたときにこんなポケモンを見たことが……。
『……カクレオン、か。確かバッグの中に"あれ"があった筈』
カクレオンの攻撃を避けつつバッグを探りあるものを取り出す。
『ピカチュウ、斜め右に十万ボルト!』
リンの言葉通りピカチュウがその方へ電源を繰り出すと、何かに当たった感触。
攻撃を食らったことにより、見えなかったその姿、カクレオンが姿を現した。
『成る程ね、スコープバッグに入れっぱなしにしといて良かった。トドメよピカチュウ、アイアンテール!』
見事にヒットしたアイアンテールにより、カクレオンは気絶したのだった。
≫N喋んない件