「………」
「…………」
沈黙が痛い、痛すぎる。
トウカシティを出て道路を歩いている間、会話は全くなく淡々と歩き続けるのみである。
私の肩に乗るピカチュウも、Nの横をくっついて歩いているグラエナも空気を察しているのか時折不安そうな表情を見せるものの特に何もせずにいる。
そのまま一言もかわさずコトキタウンに到着してしまった。
トウカシティからコトキタウン経由でミシロタウンに向かうルートは非常に短く、ミシロタウンから旅を始める新米トレーナーでもなきゃ途中ポケモンセンターやらフレンドリーショップに立ち寄る必要もない。
……しかし、この気まずい雰囲気のままミシロタウンに行ってもいいのか。
あそこには知り合いがたくさんいるし、変に気を使わせてしまうかもしれない。
Nが怒っているのなら、関係を改善させるべきだ。
「あ、あのさ……」
「……何?」
ポケモンセンターの前で声をかけると、前を歩いていたNが振り返った。
うわ、なんか強烈な流し目だ。
「Nの前でポケモン捕獲云々の話して、ごめん。でも私達ポケモントレーナーはこうして仲間を増やしていくというか……別に無理やりやってるわけでなくポケモン側にも拒否権があるというか……」
言い訳がましいような気がして語尾がどんどん小さくなっていく。
「別にそういうので怒っているわけじゃないんだ。君達とトモダチとのあり方は一つの形として認めているから」
「じゃ、じゃあどうして?」
「さあ、僕にもわからない」
「……は?」
怒っている理由もわからずにツンケンしていたというのか。
なんなんだよーあーもう!と頭が痛くなるなんだそりゃ!
「怒ってる理由もわからないなら、頼むから機嫌直してよ」
面倒なやつだなオイ!と逆にこっちがキレてやりたくなったが、ここはぐっと我慢して大人の対応大人の対応、と言い聞かせる。
「嫌だ」
「ガキか!」
「……リンとさっきの女性が話している内容にイラッとしたんだと思う、多分」
「会話……?」
会話と言えば、やっぱりポケモン捕獲の話になるわけだがそれは違うと言う。
他にした話といえば捕獲に関連してミツルくんの話題は出たが、それのどこに腹立つのか。
「その、なんというか……リンが知らない男の話をしていてもやもやっとした……のかもしれない?」
「それって……」
所謂焼きもちってやつにしか聞こえないのだが。
何でNが焼きもちを焼くのか。
というか焼きもちって……
(な、なんかこっちまで恥ずかしくなってきた……!)
結局ミシロタウンに着くまで別の意味で非常に気まずい思いをすることになったのだった。