『ピカチュウ、十万ボルト!』
「ピーカーチュー!!」
「お、俺のドガースが……!」

行く手を阻むロケット団のしたっぱ達をいとも容易く蹴散らしに進んでいく。
船がジャックされたというのなら、その首謀者は船長室にいる可能性が高いだろうと判断したリンとNは二手に別れて船長室を目指すことにした。
広すぎる船内の故に、ぶっちゃけどこに何があるのか分からない。
まあ先に進めばいずれ見つかるだろうというのがリンの意見だ。
サーナイトにジト目で見られたのでNに通訳を頼んだところ、また考えなしの行動を……と呆れてるとのことだが(だが開き直る)
大きすぎるレベル差故に一撃でやられたドガースに、悲壮な声を発するしたっぱにツカツカと歩み寄ると、リンは『ちょっと聞きたいことがあるんだけど』と仁王立ちで聞いた。

「ヒイィ!」
『……ちょっと、人のこと化け物みたいな態度とらないでよ』

やたら怯えるしたっぱに苛つきながらも、今はこいつに構ってる暇なんてない。

『今のあんた達の実質的リーダーは誰?アポロ辺りがまた復活でも企てたわけ?』
「ち、違う!二年前にガキに邪魔されてからアポロ様はロケット団を解散したんだよ!だから今のロケット団には昔の幹部はいない!」

目の前にそのガキがいるんだよ、と思いながらしたっぱの言葉を整理する。
要するに現在のロケット団上層部は昔と完全に変わっているらしい。
となると当然元首領のサカキは関係していない。

『じゃあ、ロケット団を再興した奴は誰?』
「なんで俺がそんなことまで……い、言います!」

背後でピカチュウがニヤリと笑いつつほっぺたをビリビリ放電させているのを見て、真っ青になるしたっぱ。
長く旅をしているうちに主人に似てたいへん野蛮な性格になったようである。

「今のリーダーはクロン様だ!あのお方はスゲーんだぞ、皆が尊敬……いや崇拝してる。今でも忘れねーぜ、就任最初での挨拶"ポケモンは選ばれし人間、つまり我々だけが保有を許されているのだ!"」

やたら熱く語りだしたのにに眉をひそめた。
ロケット団とはこんな宗教的な組織だっただろうか。
以前からもサカキのカリスマ性に引き寄せられてロケット団に入団した者は少なくなかった。
しかしここまで盲信的ではなかった。
首領という大きな存在はいたものの、言い方がおかしいかもしれないが各々が自主性を持って活動していた。

(なーんか、この感じすごく最近に味わった気がするんだよね)


どうやら二年前とはわけが違うらしい。









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