翌朝、先に起きたリンは未だにキノココとぐっすり寝入っているNをピカチュウに叩き起こしてもらうことにした。
嬉々としてNの胸の上に座ると、ピカチュウは頬を掴み左右に伸ばしたり上に押し上げたり見てる分には楽しそうだがやられているのは痛そうだ。
間もなく起きたNだったが起こしたのがピカチュウで、非常に楽しそうであることに気づくと何も言わずにピカチュウの頭を撫でた。
本当、ポケモンに対しては無条件で優しいなと思いつつ鞄に入っていたパンを朝食として渡す。

『もう暫く歩けばトウカシティだから、道草は出来るだけ控えてよ?』
「努力するよ」

しかし、少し歩いたところでケムッソが列をなして移動するのを、邪魔するのは可哀想と待つことになりしかもそれが終わるのに小一時間かかったのだった。
もう何も言うまい。

『あー、やっと森抜けた!』

薄暗かったところから午前中の明るい日の光の元に出て、うーんと伸びをした。
昨日の午後に森に入ったのだが、もう何日も日光を浴びていないような錯覚に陥る。
森から出るときにそこまでついてきていたキノココと名残惜しく別れの挨拶を済ませたNが、海岸から吹き寄せる風に目を細めた。

「海だね」
『ここから波乗りしていけば、最初に来たカイナシティに行けるよ』
「まだ数日しか経っていないのに、いろいろな街でたくさんの人やトモダチと出逢ってずっと旅をしていたような気がする」

確かにかなり濃い内容の旅だと言えるかもしれない、船はジャックされるし可笑しなカラクリ屋敷の罠に引っ掛かるし、ニューキンセツやデボンでロケット団が暗躍してるし……思い出せば、大半ロケット団のせいだ。

『でもホウエンもまだまだたくさん良いところあるんだから』
「そうだね、これからの旅も楽しみだ」
『そうと決まったら、もうすぐそこがトウカシティだから行こ行こ』

トウカシティにはユウキのお父さんでジムリーダーのセンリさんがいる、最初ホウエンに来たときには色々と丁寧に教えてもらったものだ。
そしてミツルくんの実家もあったりする、おそらく彼本人はここにはいないだろうが。
身体が弱いということでシダケタウンのおじさんの家に行った彼だが、途中ポケモンと旅をすることに目覚めてしまって最終的にはまさかのチャンピオンロードでバトルを挑まれた。
家族もびっくりの逞しさに改めてポケモンの凄さを感じたものだ。
とまあ、挨拶したい人がいるので自然と歩調は早まる。
町の中央北に位置するトウカジムはジムリーダーの好みなのか古風な造りで、一見すると道場のようで格闘タイプのジムかと勘違いしたものだ。
ジム挑戦ではないとの旨を伝えて、いくつかの部屋を通り一番奥のジムリーダーの部屋へと向かう。
途中エリートトレーナーの人達が「リンちゃん久しぶりー!」「一緒にいるのってまさか彼氏!?」などと声をかけてくれるので、挨拶をしつつ誤解を解きつつ一番奥の部屋のドアを開いた。

「いやー聞いたよリンちゃん、イッシュのポケモンリーグ制覇したんだってね」

センリさんは笑顔で迎え入れてくれた。

『え、どうして知ってるんですか?』
「遠く離れているとはいえ、どこの地方もリーグとジムの体制は同じだからね、情報も入ってくるさ。ジム戦をしたときも強いと思っていたが、息子の友人として鼻が高いよ」
『ユウキってどうしてます?』
「……またコンテストだ何だとミナモに入り浸りだよ」

そう言ってセンリさんは深くため息をついた。
ここだけの話、センリさんとユウキの親子間の状態は芳しくない。
そもそも息子は強さよりもコンテストのような見せる方を好み、父親の方はジムリーダーをやっている通り強さを追い求めストイックにいつも鍛錬していると専らの評判だ(これを聞いた時も格闘タイプのジムか!と思ってしまった)
そんな父親にユウキは苦手意識を持っていて、ジムは勿論あまり家にもいないらしい。

「そういえば、ユウキの話で思い出したがこの前イッシュ地方から来たという少年がいたな」
『えっと、その少年って黒髪の、眼鏡かけてる子だったりします?』
「ああ、そんな子だった」
『彼、どこに向かうって聞きました?』
「ジム攻略の順序を教えたから、ミシロタウンへ向かっただろうがもう何日も経っているだろうから今頃はもうムロタウン辺りじゃないかな」
『そうですか、ありがとうございます』

確かにダイゴさんとデボン本社で会ったというのなら、それからジム戦をして船に乗ってムロタウンというのは妥当だろう。
チェレンもちゃんと旅をしているというのに気になってしまうのは年上の性か。
挨拶も済ませたところで、そろそろ失礼しようかと思ったらセンリさんが折角来たのだから、とモンスターボールを出した。

「ところでリンちゃん、よかったら久しぶりに一戦バトルしないか?」





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