今回の事件の結末を述べるなら、肩透かしを食らった以外の表現方法はないだろう。
社長室を後にして更に上の階に上った私達だったが、そこには下と同じようにしたっぱしかいなかったのだ。
デボンコーポレーションという巨大会社を乗っとるなんていう大それたことをした割に、社長を人質にしていたのもしたっぱとか嘗めているとしか言い様がない。
あっという間にピカチュウのみで全員倒してしまうと、警察が入って来る前に団員達はすたこらさと逃げてしまい、結局ジュンサーさんに捕まったのは間抜けにも逃げ遅れた数名で末端も末端みたいな構成員であるため、今回の事件の全容を知ることは非常に困難らしいとのことだ。

「恐らく、逃げる方法だけは徹底されていたのだろうね」
『うーん、目的がさっぱりわからないんだけど』
「それはさっきも言ったけど、小手調べだ」
『小手調べって、誰の?』
「君と僕の」

散々デボンの社長に泣きながらお礼を言われ(この人とダイゴさんが親子なのだと思うとなんとも複雑である)再びポケモンセンターに戻ってきた。

「リン貴女、散々ロケット団とかいう組織の邪魔をしてきたのでしょう?目をつけられて当然じゃない」

街の安全に奔走していたツツジに鍵を返すと、話に加わってきた。
確かに二年前の件もあるからあちらさんとしても「またお前か!」と言いたい気持ちも分からなくもないが、生憎それは私の台詞だ。

「それからNさんが言っていた女性の研究員、デボンに聞いたけどそんな人間はいないそうよ」
『え、でも確かに社長室で助け……』
「やはり不自然だと思った。人質にされているなら他の社員と一緒に階下に纏めておけばいいのに、あんなところで一人でいるのはおかしい」
「可能性としては貴方達を探ろうとしたロケット団の幹部か何かでしょうね」
「今回のジャック事件の首謀者である可能性も高いだろう」

……うん、どうにも二人で会話が進んでしまって蚊帳の外である。
頭の良い人達だから私が入るよりも遥かにスムーズに話は進むのだろうけど、ぶっちゃけつまらない。
ていうかツツジ、いつの間に平然と名前呼ぶようになっているんだ、自己紹介なんてしていた時間はなかった筈。
しかし確かにこの二人頭良いしタイプ的にも理知的だから相性はいいと思うけど。

「ピ、ピカ!」
『あ、ごめんごめん』

膝の上に乗せて抱くような体勢になっていたピカチュウが痛い、と抗議の声を上げた(実際にはそう聞いたわけではないが、仕草的に)
無意識にぎゅうと抱き潰しそうになっていたようで素直に謝ると、それでも私の膝の上の居心地がお気に召しているようで再び前を向く。

「人が真面目に話をしているというのに、何をしているの貴女は」
『……何でもありません』
「とにかく、今回の件は徹底されすぎてこれ以上追及しても何も出てこないでしょうから」
『じゃあ、トウカシティに行こうかと思ってるんだけど!』

待ってましたと言えば、Nが「どうしたのそんなに急いで」とさも不思議そうに首を傾げた。
ああもう、ちょっとは空気読むとかしてくれ。

「そうね、今から出ればトウカの森を夕方までに出れるでしょう」

何かを察してくれたのかツツジが助け船を出す、ちょっと不機嫌になっていたのが申し訳なくなるくらい大人だこの人。
それ以前に仲間外れにされたくらいで気分を害している自分が子供だと思うのだが。




≫ツツジとNは相性良さそうだなと(頭脳派的な意味で)
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