※BWゲーム沿いと本編の間の話という設定。
『あのさ、今更だけど何で観覧車乗ったの?』
「なななな、何だっていいだろ!」
それはいくらなんでも吃りすぎだろ、というツッコミは相手の状況を考えると可哀想なので飲み込んでおく。
イッシュを発つ前にもう一度あの観覧車に乗りたいと思ってやって来たライモンシティ。
到着してからそういやこれ二人乗りとかいう意味分からない決まりがあったなあと思っていると、不意に今目の前で盛大にびびっているエリートトレーナーのナツキに「良かったら、一緒に乗らないか」と提案があったのだ。
で、今に至る訳だが自分から誘っておいて高所恐怖症というナツキは向かい側の座席で体を縮こませながら「下を見なきゃ大丈夫、下を見なきゃ……」と念仏のよ
うに唱えている惨状である。
「……君は、誰かと乗ったことがあるのか?」
『まあ、一回だけね』
イッシュを旅していて初めてライモンシティにやって来た時、街に紛れ込んでいたプラズマ団を追って観覧車を見つけた。
するとそこに何故か現れたNに半ば強引に観覧車に乗せられたのだ。
最初は何すんだこいつはと思ったが、それは周りに広がる景色に消え去った。
その後には衝撃的なことを突然告げられた訳だが、今はそれは置いておこう。
「それって、もしかして恋人か?」
『まさか』
「そ、そうなんだ」
フイと横を向いたナツキだったが、全身相変わらず震えているので全く格好がついていない。
『にしてもあいつ、今頃どこにいるんだか』
レシラムに乗ってどこかに消えてしまったN、勝手に好きにやっているだろう。
「……あのさ」
『なに、どうしたの?』
「もし私がこの高所恐怖症を治したら、また一緒に乗ってやらないこともないな」
結局言ったすぐに奇声を発して抱きついてきたのだが。
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