タマムシデパート内にあるカフェテラス。
お洒落な雰囲気から特に若い女性の客が多く、ジムリーダーであるカスミやエリカ(彼女のために後に和風スイーツも充実し始めた)、ジョウトからアカネも度々訪れているらしい。
午前中はカスミに挑戦者がいたということでバトルの様子を見学させてもらい(対カスミ用に電気タイプのパーティーを組んでいた挑戦者だったが、ヌオーの前に呆気なく敗れた)、午後になってからかねてから約束していたショッピングへとくり出したのである。
一通りタマムシデパートのショップを眺めてから、休憩もとい評判のケーキを食べるために訪れたカフェテラス。
女性店員が愛想のいい笑顔で運んできたチーズケーキを口に入れると、仄かな甘さが口の中に広がり、自然と頬が緩くなっていくのが分かる。
今の自分の顔は相当締まりのない表情をしているんだな、しかし女の子ならばこれは譲るわけにはいかない!と思っていると、向かいの席でリン同様チョコレートケーキに舌鼓をうっていたカスミが不意に切り出した。

「で、実際のところグリーンとはどこまでいってるのよ」

昨日も夕食グリーンの家で食べたんでしょ?というカスミに、なんで知っているのだと彼女の情報網はどうなっているのだろうかと眉をひそめると「レッドに聞いたのよ、昨日リンに勝ったって」と答えが返ってくる。

「午前中にグリーンがポケギア充電してくれたから試しに電話帳でパッと目に入った私にかけたんだって」

自他共に認めるバトル馬鹿であるレッドは元々極端に口数が少ないのもあるが、たまに口を開いてもポケモンについての話題以外彼と話が弾むということは滅多にない。
昔、彼がまだポケモンリーグのチャンピオンを破る前カントーを旅していたときからの知り合いであるカスミもそれは同様で、「レッドはそういう奴だから」と笑っていた。
一応何の用事もなしにかけた手前それだけで切るのも悪く思ったのか、レッドはリンの話題を振ったのである。

『別にご飯食べてからポケモンセンターまで送ってもらって、それだけだよ』
「まったく、その行動あんた達完全に付き合ってるわよ」
『そんなんじゃないです!』
「でもリンはグリーンのこと好きなんでしょ?」
『そりゃそうだけど……』

最初リンからグリーンに夕食ご馳走になっている(しかも手料理)なんて聞いたときは、ついにグリーンにも本気の彼女が……!と驚いたものだとカスミは思い出す。
しかも決まってリンがシロガネ山までいってレッドに負けた日の夜で、グリーンもやるじゃないかと思ったものである。
元々割と頻繁に彼女の変わることが多かったグリーンだったが、最後に付き合っていたエリートトレーナーの子と別れてから随分と間が空いている。
自分の記憶が正しければ、その彼女と別れてすぐくらいにリンが初めてトキワシティを訪れた筈だ。
ちょうどその少し前にリンがハナダシティにやってきてカスミに勝利した日、結構本気だった彼氏にフラれた日だったのだから間違いない。
しかもプレイボーイに定評のあるグリーンだったが、実は自宅に彼女を連れ込むことは殆んどなく、だいたい相手の女の家かよそに出向くと聞いた。

『だいたい、グリーンは私のことをレッドといい勝負できる後輩ぐらいにしか思ってないよ』

いろいろ世話を焼いてくれたり特訓に付き合ってくれるのは、私のためではなく寧ろ早くレッドを負かして彼にシロガネ山を下山してほしいからだと思う。

「後輩って……歳は一緒じゃない」
『トレーナー歴的な意味でだよ、いつもやたら上から目線だし』

グリーンはグリーンで、本気の子相手になるとなかなか素直になれないのかもしれない。
しかし端から見てあれは完全に両想いなのは間違いない。
トキワのジョーイさんも微笑ましげな顔で、早くどちらからでも告白すればいいのにと言っていたものだ。

「まあもう暫くはトキワにいるんなら、早いとこアタックしちゃいなさいよ!」
『それってこれからもレッドに負け続けるって言われてるようなものじゃない……』

確かにまだレッド攻略の糸口は見えてこないし、明日にでもトキワジム及びトレーナーハウスで鍛えてこようと思いながら、少し冷めたミルクティーを啜った。








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