『追われてる?』

いきなりの発言に思わず眉をひそめる。

「そう。だからちょっと匿ってほしいんだ」

一体誰に。
というか何したんだ。
状況が掴めないままにそんな疑問がぐるぐると頭をかけ巡っていると、Nがしっかり閉めた筈のドアが激しい音をたてて再び開かれた。

「あ、いやがったなこの小僧!こんなところに逃げ込んだようだが今度こそ取っ捕まえてやる……!ズバット、超音」
『ピカチュウ、ボルテッカー』

リンの対応は早かった。
ピカチュウの一撃によって一瞬にして部屋に入ってきた黒服の男のズバットは気絶した。
あまりに一瞬の出来事で言葉を失っている男を他所に、リンは提げている鞄からモンスターボールを取り出す。

『サーナイト、催眠術』

勢い良く放たれたサーナイトは全く迷うことなく呆ける男に催眠術を繰り出す。
それをまともにくらった男は、パタリと床に突っ伏し眠りこけた。

「お見事。流石だね」
『あのねぇ……私はそういう言葉が欲しいんじゃなくて今の状況を説明してほしいんだけど』

何故この船にNがいるのか。
確かレシラムに乗ってどこかへ行った筈、なら普通に空を飛ぶでどこへでも行ける。
何故黒服の男に追われていたのか。
そしてこの男の格好…真っ黒な服に胸と背にはRの文字。
これは間違いなく、

「このトモダチも君のかい?初めて見るよ」
『はぁ……』

興味津々にサーナイトを見つめ、会話を始めてしまったNに脱力。
そうだった、この人に読める空気なんて存在しないのだった。

「リン、君僕の城での対戦の後ゼクロムを逃がしたよね」
『……そうよ。レシラムとゼクロムは本来一つのポケモンだった訳だし、離ればなれなんて可哀想だと思って。それに』
「それに?」
『え、Nなら両方とも大事にしてくれると思ったから』

最後は恥ずかしいので言わないでやろうと思ったが、まるで誘導尋問のような問いかけに口をついて出てしまう。

「僕も君の逃がしたゼクロムが追いかけて来たのを見て悟ったんだよ、彼等は人の手の中にあってはならないんだとね……人間の踏み込んではいけない領域とでもいうのかな」

それから、と続けてNはいつもの早口で話す。

「この船に乗ったのはトモダチにこれに乗れば未知なる新たな世界に行けるって聞いたからかな」

どうやって乗ればいいか分からなくて、仕方無く搬入される荷物に紛れ込んだのだけど、ちょうどそこで怪しい話をしていたさっきの人に追いかけられてねと言うN。
それって無銭乗船じゃないか!しかも変なことに巻き込まれてるしと突っ込みたいところであったが、この人には何を言っては駄目だろうと溜息。

「じゃあ僕も一ついいかな、君はこの人を見たとき顔色が変わったよね」

何か知っているの?と聞いたNに、リンは改めて男の着る制服を一瞥した。


『知ってるも何も、この男は私が二年前に壊滅させた組織……ロケット団』










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