『で、チェレンは一体何でそんなに落ち込んでるのよ』
「落ち込んでない」
『いや、トレーナーズスクールの黒板の前で立ってる様子がもう負のオーラ撒き散らしてるのなんの』
「…………」
『悩みがあるなら言ってみなさいって、旅の序盤からこんなテンションだとこの先持たないよ?』

サンヨウシティに到着するとポケモンセンターでトウヤと再会(先程まで一緒にいたというのにいつの間にバトルしたというから若いって行動力あるなぁとか殆んど年変わらないのに思ってしまった)し、そこでチェレンがトレーナーズスクールにいると聞いて様子見にきた次第である。
端から見てもチェレンは落ち込んでいるように見えた、普段から落ち着いているが眼鏡の奥のその瞳には覇気が感じられない。
これからこの町にあるジムに挑戦に行くだろうに、大丈夫なのだろうか。
そう思い、近くにあるレストランに連れてきたのである。
ついでに言えばそろそろ昼食時で、お腹の虫が騒ぎだしそうな予感が若干していたというのもあるが。

「ねえ、リンも負けたことってあるの?」

リンの経歴を知ってるからこその質問。
チャンピオンという地位を手にしている彼女でも負けたという経験があるのか、とチャンピオンを目指している身分として非常に興味がある。

『当たり前じゃない、私だって負けたことくらいあるよ』
「君を負かすなんてとんでもない化け物がいたものだ」
『……まぁ、当たらずしも遠からずというか』

何度挑戦しても圧倒的な力を前に倒される。
伝説とまで呼ばれた赤い服の少年を思い浮かべて苦笑した。

「さっきトウヤとバトルして負けた」
『ああ、成る程』

チェレンはカノコタウンでトウコ、そしてリンとトウヤの絶賛三戦三敗中である。
特に幼馴染二人に負けたことはショックが大きいのだろう。

『バトルした時感じたけど、チェレンはかなり強いと思うよ。ただまだポケモンのレベルが低くて知識が生かしきれてないだけ』
「別に慰めなんていらない」
『…まったく、先輩の助言は素直に受け取っておきなさいよ』

運ばれてきたランチセットを口に運びつつ、相変わらずの様子のチェレンに溜息をついていると、ふと妙案が思い付いた。

『チェレン、今手持ちってミジュマル以外にいる?』
「夢の跡地に行った時にもらったバオップならいるけど」
『それじゃあジムに挑めるくらいのレベル上げは済んでる?』
「まあ一応は」

リンの言いたいことが分からず首を傾げるチェレンに、リンは笑顔でそれじゃ、と続けた。

『これからジム戦行くよ』
「……は?」

突然なにを言い出すのだと唖然とするチェレン。

『サンヨウのジムって、まだどこにあるか見てないけどポケモンセンターで聞いた限りだと挑戦者によって使用タイプが違うって聞いたのよ』

普通挑戦者の得意なタイプで挑ませるなんてことはしない筈だから、苦手なタイプを繰り出してくるだろう。
どういう訳か他の地方の最初のジムは岩タイプであることが多いから珍しいと思ったものだ。

『だからミジュマルだけだときついかなと思ったんだけど、大丈夫じゃない?』

自信をつけるためには手っ取り早い話がバトルに勝てばいい、それがジムリーダーなら尚更だ。
チェレンの返事を待っていたのだが、何故か不意によそから返事が返ってきた。

「その通り!我がサンヨウジムでは挑戦者が最初にパートナーにしたポケモンの苦手なタイプを使用することにしているんだ」

見ればテーブルの脇にウェイターの衣装に身を包んだ緑色の髪の毛の青年が笑顔で立っている。
チェレンと二人で訳が分からず顔を見合わせていると、青年は続けた。

「あぁ失礼。僕はサンヨウジムのジムリーダー、デントと言います」
『……はい?』
「気付かなかったのですか?このレストランはレストランでありながら同時にジムなんですよ」

ええ!?というリンの驚きの声が店内に広がったのだった。








≫ジム戦フラグ、最初はチェレン少年の付き添いです。
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