「ほええ〜、リンさんポケモンバトル上手いんですね」

独特の感嘆を上げるベルに苦笑。
ここはカノコタウンから一番道路を北上したところにある小さな町、カラクサタウンのポケモンセンターだ。
先に到着していた幼馴染四人組がアララギ博士からポケモンセンターの説明を受けているのをなんとなく眺めながら、先程ジョーイさんから返されたばかりのツタージャが楽しげにピカチュウとじゃれているのを微笑ましく思っていると、急にベルがこちらへ駆けてきて隣に座った。

『タイプの相性が良かったからだよ』
「謙遜しなくてもいいよ、大体君のツタージャはまだアララギ博士からもらったばかりで草タイプの技なんて覚えてない筈。むしろ先に野生のポケモンやトウコと戦わせていた僕のミジュマルの方がレベルは高かったよ」

ポケモンセンター内に併設されているフレンドリーショップにて買い物を済ませたチェレンが歩いてきて話に加わる。
一番道路とカラクサタウンの境目にて行われたチェレンとリンのバトルは、リンの勝利に終わった。
チェレンもリンもアララギ博士にもらったミジュマルとツタージャの一騎討ち。
ミジュマルよりも素早さの勝るツタージャが攻撃をヒラリとかわしつつ、効果的な攻撃を加えていったのだ。

『まあ私二年も君達より長くトレーナーやってんだから』
「すごーい!どこ行ったんですか?」
『えーと、ジョウトにカントー、それからホウエンかな』
「ホウエンって、温泉があるんですよね!?旅行に行ったことがある友達が教えてくれてっ」
『あるある!すっごい気持ちいいよ』
「……二人とも、人の存在完全に忘れてるよね」
『あ、ごめんごめん』

ベルと二人で盛り上がってるのを見て、やっぱり歳上(しかも他の地方とはいえチャンピオン)には見えないリンに、溜息をつく。
バトルだって、知識に多少なりとも自信があったからミジュマルよりもレベルが低い相手に負けたのは少なからず悔しかった。
トウコにも負けたし、幸先悪いなと思う。

「チェレン、なんか外で何かあるみたいだけど見に行かない?」

ポケモンセンターの外に人だかりが出来ているのを見て、トウヤが誘う。
もしかしたら、彼なりに負けた自分の気を逸らそうとしているのかもしれない。
彼もベルとバトルして勝ったが、ベルはご覧の通りマイペースで自分ほど気にしていないようだ。

「街の人のかなりが集まってるみたいだね、君達も行く?」

女子三人に聞けば、ポケモンセンターの奥の方で地球儀を模した機械(残念ながらまだ使えないようだが)を興味深げに眺めていたトウコは行く!と元気に返事した。

「私も見に行ってみようかなあ、リンさんは……」
『私はパス。四人で行ってきなよ』

手をヒラヒラと振り、ポケモンセンターを後にするチェレン達を見送る。
入り口の自動ドアが閉まるのを確認すると、やっぱり幼馴染はいいなあと思い直してみる。
自分にも年下のやたら女好きな幼馴染がいたが、あんな風に一緒に旅をしていた訳ではない(彼等もこれか別行動らしいが)道中で赤い髪の少年と会えばしょっちゅう険悪ムードになっていたし。
そういや二人ともどうしてるかな。
しばらくそんな物思いに耽っていると、ポケモンセンターから見えていた人だかりが無くなっていることに気付く。

『もう終わったのかな』

様子を見ようとツタージャをボールに入れ、ピカチュウは肩に乗りながらポケモンセンターの外に出る。
と、出てすぐのところで不意に前方から歩いてきた人とぶつかりそうになる。

『あ、すみません』
「君のポケモン、今話していたよね」
『……は?』

いきなりの意味不明な発言に、怪訝な表情をしてしまう。
何なんだろう、この人。

「僕の名前はN。君の名前は?」
『……リン』
『リン、君のポケモンもさっきの少年と同じで不思議なことを言うんだね」
『はあ……』

どうやら目の前にいるNという人物(名前からして既に怪しい)は、自分はポケモンの言葉が分かると言っているらしい。

「一緒に旅を出来ることが嬉しい、か」
『ピカチュウ、そう言ったの?』
「ピカ!」

この反応は自分にだって分かる、ピカチュウは肯定したのだ。

「唐突に聞くけど、君はこの世界、トモダチ……ポケモンが人間に支配されて人間の娯楽や欲を満たすために戦わせられている状況をどう思う?」
『随分と偏った言い方ね。確かにポケモンバトルってのは人間同士の取り決めで行われていることは否定しないけど、ポケモンだって嫌だったらそれに則らないよ』
「成る程、君はポケモンと人間は共存出来ていると考えているんだね」

どうやら僕とは意見が合わないようだ、とNは寂しげに笑った。

『貴方の言い分も分からなくはないわよ、異種同士しかも普通なら言葉の通じない同士が共存なんて難しいもの』

でも少なくともポケモン達と心を通わせて、信頼し合っている人物を何人も知っている。
だから一概にそれを悪いと決めつけるのは良くない、と思ったそれだけだ。

『それに、貴方がさっきポケモンを友達だと言ったの、それは同感だと思っただけ』

"貴方にとってポケモンとはどんな存在ですか?"という質問には人によっていろいろな答えがある。
家族、仲間、相棒……友人など。
それは自分にも当てはまるもので、私は全て正解だと思う。

『まあ考え方は人それぞれってこと、別に私はその考えを改めろなんて言わないよ』

Nは小さく「そうだね」と呟くと、「君とはまた会うかもしれないね」と言ってその場から去って言った。

『何だったんだか……』







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