デボン本社の二階は主に開発部となっている。
二階を占拠したロケット団員の屍(実際はあっという間に倒されて茫然自失)を尻目に、縛られているデボン社員を解放した。

「いやー、一時はどうなるかと思ったよ」

数年前に他の地方において同業者やラジオ塔がジャックされるという事件は当然耳にしていたものの、まさか自分の会社でも同じことが起こるとは思っていなかったらしい。
心底安堵したように礼を言う社員に、でもまだ上はロケット団がいますからと苦笑して外に避難するよう促す。

「この建物は三階建て?」
『うーん、私も三階までしか行ったことないんだけどまだ上の階あるらしくて』
「ここにある社内地図には載っていないようだ」
『社長のプライベートスペース、とかじゃない?』

この二階で私とNとで散々暴れまわったというのに、騒がしいと上の階から見にくる様子もないので作戦会議を開く。
倒したロケット団員から口を割らせた(ピカチュウ先生が担当した)情報によると、ここに来た団員の半数は二階で既に倒されたらしい。
残りのしたっぱと幹部は上に行ったとすると、それなりのスペースがあることになる。
と、同時にこれで半数ならあまり人員が割かれていないことに首を傾げた。
ラジオ塔では高さがあったせいかもっとたくさんの団員がいた気がする。
そこはNも思い当たった部分らしい。

「どうやら本気でここをどうにかする気はないみたいだ」
『じゃあ何が目的なの?』
「それは僕にもわからない、というよりもこの行動は理解しかねるんだよ。小手調べ、に近いと思う」
『小手調べ……』

一体誰がそんなことを、いや船で名前を聞いたクロンとか言う現リーダーだろう。

『それって、誰の』
「おそらく船でのことや、ニューキンセツ、昔に君に壊滅に追いやられたことから君の可能性が高いと思う、それか僕か」
『完全にもう目つけられてるってことね』
「それは仕方ない、僕らは不穏分子とかいうレベルではないから」

とにもかくにも、早々にここからロケット団の人達には退散戴こう、更には彼等が今ホウエンで何を企んでいるのか知れたら尚良いのだが。
時々いるのだ、聞きもしないのに勝手に喋ってくれる奴。
取り敢えず三階の社長室まで進もう、そう頷き合って三階に続く階段を駆け上がる。

『……誰もいない?』

社長室はガランとしていて、人気がない。
奥の方に階段を見つけてやっぱりこの上があったかーと思いつつ、なんでまたここにはロケット団員すら一人もいないのかと首を傾げると。
不意に、社長の座るデスクの方からカタリと物音が響いた。
やはり誰かいるのだろうか、音がしたデスクの下を覗く。
そこにはロープで縛られている白衣の女性が押し込められていた、デボンの研究員だろう。
直ぐ様縄をほどき、解放してやる。
わあ綺麗な人だ、目の下に隈が気になるがそれだけ日夜研究に勤しんでいるのだろう。

『大丈夫ですか?』

縛られていた女性はハァ、と小さく息を吐くと微笑む。

「ありがとうございます、社長と一緒にいたところを黒い服の人達に襲われて……社長は上の階に」
『上は何があるんですか?』
「私は一介の研究員なので、わかりません」
『やっぱ踏み込んでみないと分からないか……』

一回にいる避難した社員達のところへ送っていこうと下へ戻る階段まで行こうとしたところで、ふと社長のデスクの上にある本が目に入った。
その表紙に書かれている”点字の全て”というフレーズにあ、と声を漏らす。

「リン、どうかした?」
『これ、ダイゴさんが言ってたデボンにあるっていう点字についての文献じゃない?』

その本を手にとって見せれば、Nが確かにこれみたいだと頷いた。

「あの、その本が如何しましたか?」
『あー、どうもロケット団がこれを狙ってたんじゃないかって思ってたんですけど、こんなところに放っておかれてるから違ったみたいですね』
「ロケット団は点字を調べてどうするんでしょうね」

意外と研究員のお姉さんの食い付きがいい。
無口な人だと思っていたのだが。

「リン、そろそろ行こう」
『え、N?』

お姉さんとの会話を遮って行こうと言うNに戸惑う。
というかこの人下まで送っていかないと、と思ったが本人が「大丈夫です、一人で行けますので」というので渋々そこで別れることにする。

『ちょっと、どうしたのそんなに急いでる様子でもなかったのに突然』
「………」

無言で研究員が去って行った階段を見ていたNだった。



「期待を裏切らなかったようだな、プラズマ団の元王という青年は」







>>何かに気づいたNさん。
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -