デボンコーポレーション入り口前にいるロケット団員の目を掻い潜り、本社の裏口に到着した私とNは団員がこちらにやってこないか細心の注意を払いつつ裏口の鍵を開けた。
音をたてないようにしながらゆっくりと扉を開き、中の様子を窺うもそこに人の気配はない。
大丈夫、と声を出さずに口パクでNに伝えると中へと侵入した。
侵入、というのは言葉が悪いかもしれないが実際行動的にはこの表現が一番しっくりくる。

『多分ここは受付の裏だと思うんだけど、正直デボンって二、三回くらいしか来てないから……』

誰もいない受付のカウンターに隠れながら小声で言うと、何かを見つけたのかNは人差し指を口の前で立てて静かにするように示す。
……なんか妙に似合っているな、そのポーズ。

「階段のところ、人がいる」

カウンターから少しだけ顔を出して階段を見れば、確かにかの有名なロケット団の衣装に身を包んだどう見ても下っ端ですオーラ全開の男が一人、立っていた。
どうやら表だけでは心もとないのか階段のところにも見張りを置いているらしい。
しかし人選を見誤ったとしか言いようがない、先程からその下っ端は「眠い」「面倒臭え」だの繰り返していてやる気は感じられない。

「上に報告されたら動きづらそうだね」
『その前にのしちゃえってこと?』
「発想としては乱暴だと思うけど」

自分だってそう思ってたくせに!と抗議したくなったがそれをしてしまうと下っ端にこっちの存在がばれてしまうので黙った。

『で、天才のN君は一体どうするつもり?』
「怒ってる?」
『怒ってなんていません』

自分が子供じみているなんてことは分かっている。
実際(多分)Nの方が年上なのだし、ポケモン絡みのことでもなければ彼は普段はとても落ち着いているのだ。
少し拗ねた様子の私にNは苦笑して話を続けた。

「まず彼の注意を何かに引き付ける必要がある」
『注意、ねえ……』

二人して背後に控えているグラエナに目を向けた。
しっかりNに懐いていてモンスターボールにも入らず放し飼い状態(というとNはきっと怒るのだろう)になっているがここではきちんとNの言いつけを守って静かにしている。
私達が自分の方を見たので何かを勘違いしたのか、グラエナは嬉しそうに尻尾を振った。

「頼めるかい?」
「?」
『……イマイチ理解しているようには見えないけど』

ともかく、これ以上ここで隠れて会話をしていても何も進まないし上では社長や社員達が何をされているかもわからないので早急にここを進まなければならない。
先程からNがグラエナに説明してくれているようだが、残念ながらグラエナの頭の上には疑問符が浮かんでいる。
全く伝わっていない。
厳密に言うと言葉は伝わっているがNが妙に小難しい作戦を提示してくるので理解できていないのだ。
私自身そんな回りくどいことをする必要はないと思うので、ああもう面倒だと鞄の中に入っていた木の実を一つ取り出すと、ロビーの方へと投げた。

「あ……」

それは以前ユウキから聞いていたグラエナの好きな味の木の実で、当然ながらグラエナは勢いよく駆け出す。

「ん、何してんだお前」
『サーナイト、催眠術!』

突然出てきたグラエナに気を取られている下っ端にすかさずモンスターボールからサーナイトを出す。
驚く間もなく催眠術を浴びた下っ端は、コテッと床に倒れて眠りに落ちた。

『これでよしっと』
「……僕の作戦」

どうやら今度はNが気分を害してしまったようだが。







>>グラエナはちょっとアホの子。
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