≪現在私の後ろにありますのが皆様ご存じのデボンコーポレーション本社です、ロケット団を名乗る犯人たちがここに立て籠もり早数時間。依然として彼等の目的は判明しておりません……≫

マリさん達についてカナズミシティに到着したものの、デボンコーポレーションの前はマスコミやら野次馬やらでごった返している(くそ遅かったかとマリさんは他社に先を越されたと悔しげだった)
更にデボンの前には侵入者を許さないとばかりに見張りのロケット団員が目を光らせていて、残念ながら正門から堂々と入っていくということは出来ないらしい。
とにかくここまでバトルもしているしポケモン達も疲れているということで、一旦ポケモンセンターに向かうことにした。
ポケモンセンターのロビーではテレビがついていて、訪れた人達が不安げにその前に集まっている。
デボンの前ではマリさんが中継を行っていた。
ポケモン達をジョーイさんに預けた後、Nと一緒にテレビの前に行く。
マユミのところから同行しだしたグラエナはまだ元気一杯だという様子でNの足に擦り寄っているので預けなかった、流石というか短い間だがかなり懐いたようだ。

「この前も船が乗っ取られたっていうし、物騒になったねえ」
「ロケット団って五年も前に解散したって聞いたよ?二年前に当時の幹部が復活させようとしたけど失敗したって」
「でも実際あんなRのマークが入った服着てるやつロケット団以外ありえないじゃん、また活動開始じゃないの?」
「えー、じゃあまた表安心して歩けないよ」
「ていうかこの前もデボンに不審者が入ったって聞いたけど、警備どうなってんの」

テレビを見ながらの口々の会話が聞こえてくる。
まあ私個人としても最後の人の言っていることには賛同できる、いくらなんでもそんな簡単に乗っ取られるって警備ザルすぎないか。
とりあえずテレビが見える位置のソファに座り、これからどうするか話し合うことにした。

「目的は恐らくこの前会った元チャンピオンが言っていた点字に関する文献だろうね」
『でもそれだけのためにわざわざビル全体をジャックなんて手間のかかることする?文献がほしいなら手っ取り早い話、空き巣でもした方があまり表沙汰にならないと思うんだけど』
「それだけじゃないだろう、何か他の目的もあると思うよ」
『他の目的、ねえ……』

それについては恐らくこっちで考えても思いつくことはないだろう、直接聞かないと。

「行くの?」
『勿論。片付けはやるなら最後までやってやるわよ……といっても今のところあの中にどうやって入るかで困ってるんだけど』
「それなら、問題ありません」

背後から突然声がして振り返れば、そこにはこのカナズミシティのジムリーダーでありポケモントレーナーズスクール教師も務めているツツジが立っていた。

「お久しぶりですわね、リンさん」
『ツツジ!』
「あら、いつの間に貴女は私を呼び捨てにするほど仲良くなったのかしら?」

確かにホウエンで初めて挑戦したジムであり、その時にバトルしたっきりなので別に親しくはないのだが相変わらずこのツンツンっぷりである、時間経ったんだからちょっとはデレて。
実際のところリンを見つけたツツジが声をかけようとしたところ連れの存在に気づき、それが端正な青年だったものだから年頃の女子として先を越されたような感じがして無意識にツンとした話し方になってしまったのだがリンがそれに気づくはずもない。

「ともかく、デボン本社に入りたいと仰りましたね」
『う、うん。でも表は全部ロケット団に塞がれてるし。前にジョウトのコガネシティでラジオ塔が占拠されたときはどうにか見張りをかわせたんだけど』
「どういう方法をとったの?」
『町にいるロケット団の身包み剥がして変装した』
「……それは、寧ろ貴女が捕まらなくて良かったわね」

ツツジが呆れたように溜息をついた。
そしてどこから出したのか鍵を一つ、机の上に置く。

『えっと、これは?』
「デボン本社の裏口の鍵よ」

話によると、この前の不審者騒ぎの一件以降、以前マグマ団に荷物を強奪されたのもあって流石に危機感を覚えたらしくもしもの場合に備えてこの町のジムリーダー、つまり一番の実力者に裏口の鍵を渡しておいた。

「これを貴方達に預けます。だからさっさとあの中いって不届き者を追い出して頂戴。本来なら私がやってしまいたいところですけど、私はこのカナズミシティの市民の安全を守らなければならないから、あんな奴らが町に蔓延っているというのにデボンだけにかまけているわけにはいかないの」
『成る程、そういうこと』

ツツジもツツジなりにどう行動すべきか考えあぐねていたということか。

『わかった、デボンこのことは私達に任せて』







>>ツツジはツンデレ(ツン成分が滅茶苦茶多い)だと思っています。
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