流星の滝。
よく隕石が落下してくる神秘の洞窟と言われている。
内部はひんやりとしていて比較的寒冷なホウエン地方の中でも一際涼しい冷涼スポットである。
ここを抜ければカナズミシティはもう目と鼻の先だ。

『で、まーださっきのこと根に持ってるの?』
「根に持ってなんかないさ」

さっきのことというのは私がNとマユミの問答を強制終了させてしまったような形になったことだ、まあ実際強制終了させたのだが。
私だって無意味に終わらせたわけではない、あれ以上続けても何も生み出さないと判断しての行動だ。

「君が以前、”考え方は人それぞれ”と言っていたのを思い出してね」
『ああ、そんなこと言った』
「確かに僕は他人から意見を聞かせられてもはい、そうですかと自分の意見や思っていることが変わったりしない」
『人間そんなものよ、結局自分の意見が絶対だというのが根底にあるから』
「じゃあ議論を交わすことは無意味なのかな」
『ばっかだねえ、Nは』

勿論Nは馬鹿ではない、そんなの分かり切った話だ。
間違いなく私よりもはるかに頭が切れるだろうし、難しいこともたくさん知っている。
でも今言いたいのはそういうことじゃない。

『人の意見を聞くことで、勝手にそれを吸収していくそれが議論の醍醐味ってやつよ』
「矛盾してない?」
『そうかもね』

でも人間だけじゃない、ポケモンもすべての生物は外と触れ合うことで井の中の蛙から抜け出しいろいろなものを学んでいく。
”勝手に”という部分がミソだ、自分も知らない間に感化されて影響されていく。
そういうN自身だってあの城で言っていたじゃないか、衝撃だったって、旅を続けるにつれて本来の自分の気持ちがどんどん揺らいでいったって。

『自分の気持ちもしっかり持ちつつ、相手も受け入れる。それってすごく難しいけどそれができれば誰も争いなんて起こらないんだろうね』
「……リン、君はもっと何も考えていない人だと思っていたけど訂正するよ」
『なにそれ、結構失礼なこと思ってたんだ』
「何も考えていないから他人が考えていることも受け入れられるんだと、ただトモダチと一緒にいて旅して楽しんでるだけかと」
『随分な言い様だね、まったく』

はあ、と溜息をついた。
どうやらNの私に対する認識は結構酷いものだったらしい。
ともかく滝のマイナスイオンを堪能しつつ、流星の滝を抜けようと思っているとあまり人が少ないこの洞窟の中で、大きな声が突然入口――私達が来たハジツゲタウンの方向から聞こえてきた。
何事かと思えば大きめのカメラ肩に担いだ男性とマイクを持った女性の二人組が焦った様子で走ってくる。
一刻も早くここを抜けようとしているようだ、主に女性に男性の方が急かされているようだ。
その人物には見覚えがあった。

『マリさんと、ダイさん……!?』
「あら、誰かと思えばリンちゃんじゃない!」

この二人はホウエン地方のテレビ局のリポーターとカメラマンで、彼等自体も時々私のようなトレーナーに勝負を挑んでくる、しかも結構強い。
その後色々とインタビューを受けているうちに仲良くなったのだ。

『どうしたんですか?かなり急いでるみたいですけど』
「そうだったわ、大変よ!さっき速報が入って、カナズミシティのデボンコーポレーション本社が何者かにジャックされたって……噂だとロケット団とか何とか。私達も今急いで向ってるところなの」
『……!!』
「だからってこのカメラ滅茶苦茶重いんですよー、マリさん人使い荒いですって」
「馬鹿!マスコミにとって速さは超重要なの!!わかったつべこべ言わず走る!」





>>Nとだとお喋りが多くなるんですよね、必然的に。
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