火山灰の降り積もる草むらを抜けて、ハジツゲタウンではポケモンセンターでの休憩も早々に114番道路へと繰り出した。
というのもこの道路は以前訪れた時に捕まえて、その後のホウエンでの旅に同行してくれたとあるポケモンの故郷なのだ。
先程から腰にあるモンスターボールの一つが早く出せとばかりにカタカタと揺れている。
目敏くその様子に気づいたNが出してあげなよ、と笑った。
まだこの子をNに紹介した覚えはないのに流石というか、お見通しだったらしい。
尚もカタカタ揺れるボールにせっかちだなあと思いながら出してやる。
当時チルットだった――チルタリスは嬉しそうに飛び回った。

『やっぱり故郷に戻ってくるのって嬉しいのかな』
「そうなんじゃないかな、僕にはイマイチわからないけど」

プラズマ団の城というお世辞にも趣味が良かったとは言えない建物を思い出す。
あそこがNの故郷と呼べる場所だったのか私にはわからない。
楽しげにしているチルタリスを見ているNの表情が何とも言えなくて、黙ったまま見ていた。
私自身も故郷であるワカバタウンに帰ればお母さんがいるし、幼い頃からの知り合いもいる。
だが果たして彼に帰るべき場所があるのか、などと思ってしまった私は失礼な奴だ。

「僕は人間の考えていることは理解出来ないけど、リン君の考えていることはわかるよ」

確かに僕には故郷なんて存在しないし、あそこが故郷だなんて思わないとNは言った。
あまりにも図星な言葉にバツが悪そうに目を逸らす。

「ねえリン、君の故郷はいい所?」

答えは勿論イエスだ。
街にはフレンドリーショップすらないド田舎だけど、たくさんの暖かい人達やポケモンに囲まれていたと思う。
小さな頃からポケモンが大好きだった私は有名になりだしたウツギ博士の研究所にしょっちゅう押し掛けて、ポケモン頂戴と博士を困らせ母に叱られたものだ。
相棒であるピカチュウもかつて博士がカントーに行った際にピカチュウが持っていたという謎の卵を私に預けてくれて孵化し、ピチューが生まれたのが始まりだったりする。

「それじゃあ今度紹介してよ、君の故郷」

Nの言葉に頷いた。
彼に見てもらいたかった、私とポケモンの出会いの最初を。
果たして彼はどう思い感じるのか純粋に興味があった。
チルタリスが前からここに生息していて仲良くしていたというハブネークとチャンバラみたいに遊んでいるのを眺めなていると、不意にガサガサと激しく草を掻き分ける音がする。
同時に何かが走ってくるような足音がしてきて、野生のポケモンだろうかと思っていると急に黒い影が草むらから飛び出してきた。
その正体を認識する前に飛びかかられ、のしかかってきた。

『ちょっ、なに……』

突然の出来事に驚きNに助けを求めるが、Nは既にその影の正体に気づいているのか止めることもせず微笑ましげに見ているだけだった。
黒く硬質な毛がチクチクと肌に当たる、その感覚は以前触ったことのあるものだ。

『ユウキの、グラエナ?』

正確には私が知っているのは進化前のポチエナだが、この異常なくらいの人懐っこさはそれしか考えられない。
ペロペロと顔を舐めてくるのをくすぐったく感じながら頭を撫でてやれば、クーンと嬉しそうに鳴く。
しかしどうしてこんなところにこの子がいるのかと周りを見渡すと「すみませーん!」と走ってくる女性の姿。
そういえばこの近くには彼女の家があったなと思い出す。
ホウエンにてポケモン預りシステムを営んでいるマユミの家が。







>>チルタリスは初期設定として夢主のポケモンで考えてました。グラエナはユウキのですがフラグ。
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