「そういえばカナズミでイッシュから来たって子と会ったよ」
『もしかして、その子黒い眼鏡をかけたチェレンという名前だったりします?』

頷くダイゴさんにあの子はもうそんなところまで行っていたのかと溜息。
砂嵐吹き荒れる砂漠をどうにか抜けて、三人で111番道路の民家にお邪魔することにした。
この家の家主は通称ケンコーばあさんと呼ばれており、砂まみれでいる私達を見るなり「疲れていないかい?今日は泊まっていきなさい」と何か言う前に決めてしまったのだ。
そういえばもうそろそろ日が沈む時間帯でハジツゲタウンには火山灰の道を通らないといけないので、有り難く泊まらせてもらうことにしたのだった。

『チェレンがどんなポケモン連れてたか分かります?』
「確かキモリだったかな。デボン本社に不審者、といっても正体はロケット団だけどが押し入って来たときに一緒にダブルバトルしたんだ」
『あんたまたそんなことしたんですか』

どうせロケット団のしたっぱなどこの人の手にかかれば赤子の手を捻るかのように退治出来るのに。
そういや昔トクサネの宇宙センターでマグマ団相手にダブルバトルした時も、あまり積極的に攻撃せずにやたらサポートに回っていた気がする。
そこへお婆さんから死んだじいさんの甚平だよ、と言って借りたそれを着たNが私達を見つけて近寄ってきた。

『うわ……なんか妙に似合ってる』
「そう?」

何故かNは楽しげだ。
そもそもどうしてNがそのような格好をしているかというと、私達三人とも砂まみれになったわけだが特に白い服を着ていたNの被害が酷かったのである。
私とダイゴさんも着替えたがそれぞれ着替えを持参していたので、Nだけがお婆さんから借りることになったのだ。
一緒に洗濯機に回されているのでスーツとか傷むだろうな。

「話は戻すけど」

急に神妙な顔になったダイゴさんに私達も座り直す。

「今ホウエン地方でいろいろ活動しているロケット団、二年前にリン君が壊滅させたんだよね」
『なんでそんなこと知ってるんですか、私言った覚えはありませんよ』
「当時の新聞を調べたんだよ」

正確には私と、同じワカバタウン出身のゴールド、それから謎の少年(とここでは言っておく、彼にもプライバシーがあるから)シルバーとで成し得たことだ。

「その三年前、マサラタウン出身のレッドという少年に一度解散に追い込まれボスは失踪。更に打撃を受けて完全に壊滅した」
『そういえば船で新しいボスがクロンとかいう名前だと言ってたよね』

Nが頷く。

「クロン……そっちについてはまた調べてみるよ」
『あと砂漠で言っていた、点字について教えてくれませんか?出来れば文献とかのある場所を』

私は難しい本を読むのは苦手だが、幼い頃から慣れているNがいるから彼に任せることにする。
フエンタウンのお年寄りでも読めなかったのだから、中々難解な文字なのだろう。

「それならデボン本社に行けばあらゆる蔵書があるから、その中にあったと思うよ。かくいう僕もそこにあった本を昔読んでたから知ってたんだ」
『デボン本社……カナズミシティですね』

カナズミならここからハジツゲタウンを通って、りゅうせいのたきを経由し行ける。

「次に向かうところが決まったね」

Nの言葉に大きく頷いた。
少しずつ、全てが動き始めている。

「僕は明日朝早くここを出るから取り敢えず今夜でお別れだね」
『どこか行く予定があるんですか?』
「他にも点字の刻まれた遺跡があるからそこに行ってみるよ」







≫甚平着てるNとかテンション上がる。
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