『うわー、砂嵐が酷い』
「仕方ないよ、砂漠だから」

イッシュにもリゾートデザートという砂漠がこちらの方がゴーグルをつけなければ目に砂が入ってしまい容易に歩くことすら出来ない。
前に軽く横切る程度で通ったときはフエンでハルカちゃんがゴーグルをくれたが、今は何も知らない観光客が困っているということでフエンのフレンドリーショップで販売されていたため有難く二つ購入することにした。
砂漠の中では地面岩タイプのポケモンは何もしなくても砂嵐の攻撃を食らってしまうため、モンスターボールが好きでないピカチュウも今回ばかりは仕方なく中に入っていてもらいことにして靴の中に砂が入り込むのに顔をしかめながら歩く。

『うう……服の中にも砂が入ってきて変な感じ。ここから出たらすぐハジツゲタウンのポケモンセンターでシャワー浴びさせてもらう、絶対!』

途中の道路にトレーナーやらいるが知ったこっちゃない。
一人で拳を握りしめているリンを見てNは小さく笑い声を漏らす。

「そんなに嫌なら無理に来なくても良かったのに」
『いや、ホウエンを観光するなら隅の隅まで行ってやろうってことで。あ、Nの服白いから一段と砂がついてるの目立つよ』
「じゃあ僕もポケモンセンターに着いたら洗わせてもらおう」

こう見ると如何に初対面の頃に比べて彼の表情が豊かになったかが分かる。
先日その事に少し触れてみたがN曰く「リンのおかげ」だと言うが、私一人の力ではない。
彼が旅先で出会った全ての人やポケモン達の影響なのだと思う。
物好きなことにこんな視界の悪いところで勝負を仕掛けてくるトレーナーにサニーゴ姉さんで応戦しつつ(砂嵐で大層ご立腹にモンスターボールに戻っていった)取り敢えず端の方まで進んでいくと、遺跡のような巨大な石を発見した。
悠然と佇むそれはまるで異次元にあるかのように不思議な存在感を放っていて目の前にいるこちらも圧倒されてしまう。
私はこういった方面には全く詳しくないが、遺跡に興味を持ったのかNは手で軽く触れたりしている。

「この中に、トモダチが眠っている……」
『え?』
「ずっと眠り続けているようだね」

トモダチ、つまりポケモンがこんな砂漠の片隅にある遺跡の中で眠り続けているのか。
Nもどこか悲しげに遺跡を見つめる、と遺跡の入り口(岩で完全に塞がれている)に何かが書かれていることに気付いた。

「六つの点……」
『これって、フエンタウンでロケット団がお年寄りに聞いて回ったっていうやつじゃない?』

確か点字とNは言っていたと思う。
そこに書かれていた六つの点の指し示す意味が解読出来るか期待したが、残念ながら流石に解読方法までは知らないと首を横に振った。
少しだけ嫌な予感がした、ここで眠り続けている古代のポケモンに謎の文字を解読しようと画策しているロケット団。
だが分からないままでいてもどうしようもないのでこの遺跡の辺りで砂漠も行き止まりなため、戻って砂漠から出ようという話になっていると遺跡の裏で不審な人影が見えたような気がした。

『……?』

先程バトルを仕掛けてきた遺跡マニアのおじさんだろうかと目を凝らすと、目に入って来たのは凡そ砂漠には似つかわしくないスーツ姿。
頭の中で一人の存在が浮かんだ。
チャンピオンな上にデボンコーポレーションの御曹司という地位にいながら、自由奔放にホウエンを飛び回っている人。
何よりもここは彼の好きな石やら遺跡やらたくさんあるから姿を見ることに違和感はない。
ただ服装は違和感有りまくりだが。
その人物もこちらの存在に気付いたのか笑顔で手を上げた。

『お久しぶりです……ダイゴさん』







>>ダイゴさん初登場。
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