キンセツシティ、四方位に道が伸びているこの町はこの地方を旅するに当たって重要な中継点だ。

『さてと、これからどの方向に行きたい?』
「リンに任せるよ、ホウエンの地理はさっぱりだから」
『私も別にどこに行っても構わないんだけどね』

西に進むと117番道路を通りシダケタウンに、北に進めば砂漠や煙突山、その麓にはフエンタウン、西は少し険しい長い草の道が続くがそれを抜ければヒマワキシティだ。
それぞれ三つの街を簡単に紹介すると、フエンタウンの"温泉"というキーワードにNは興味を示したようだ。

「本で読んだことはあるけど、実物は見たことがないんだ」

行きたい、と目が語っていて思わずクスリと笑みを溢してしまう。
イッシュは色々と文化的に発達していて高層ビルやらものすごく長い橋など、初めて見た時は純粋に感動したものだ。
今のNは当時(といってもすごく最近の事だが)の私と同じく新たな土地での感動を味わっているのだろう。

『じゃあ行こうか、フエンタウン』
「いいのかい?」
『私も久しぶりに温泉入ってリラックスしたいし、ね?』

傍らのピカチュウに同意を求めれば、元気良くピカァー!と返事が返って来て二人して笑ってしまう。
取り敢えずこれから行き先は決まった。
実際に煙突山に向かうのは明日にすることにして、夕暮れ時の中キンセツシティを散策する。
思い返せば今日一日、カイナを出たらすぐ雨に降られるし雨宿りしようとお邪魔した家はカラクリ屋敷だし、オマケにまたロケット団と戦ったりと面倒なことだらけだった気がする。
サイクルショップカゼノにて、マッハ自転車とダート自転車を興味深げに眺めているNを横目に、以前ここで自転車を貸してくれた店主のカゼノさんに挨拶をする。

「おかげさまで、ウチのサイクルショップも大盛況だよ!若きチャンピオンが愛用した自転車ってね」
『こちらこそ、自転車があったおかげで進めた場所もたくさんありましたから。大変お世話になりました』
「どう?今度ミナモやカイナに貼る予定のポスターのモデルやらない?」
『折角ですけど、明日の朝にはキンセツを発つ予定なんで』
「そりゃ残念だなぁ…じゃあそこの、緑色の髪の」
『彼は私の連れなんで』
「そうか……君もお年頃だものね」
『なんか勘違いしてません?』

テッセンさんもそうだが、おじさん達はすぐにそういう色恋の話に繋げたがるものなのだろうか。
成り行きで一緒に旅をすることになった訳だが、Nに対してそういう感情を持ったことなんてない。
というよりもそんな余裕もなかったのが正しいか。
確かにNは顔とか整っているし、所謂イケメンに部類されると思う。
あまりにも世間知らずで偏った考え方の持ち主だが、誰よりもポケモンを愛していることは間違いない。

『要するに、人間は眼中にないんじゃないかなぁ』
「どうかしたの?」
『何でもない』

今夜の宿であるポケモンセンターへの帰路、ふと呟いた言葉にNが首を傾げた。
今もピカチュウと楽しそうに談笑中(どんな会話をしているのかは全くわからない)だし、そもそも私と行動を共にしている理由だって多分同じくポケモンが好きな人だからとかそんなものだろう。
共通の趣味を持つ友達、Nから見れば私はそんな位置付けなのだと思う。






>>現段階の関係。
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