「いやー助かった!いきなり後ろから襲われてのぉ、一時はどうなることかと思ってたわい」

ロケット団員を撃退し、発電機のすぐ側で縛られていたテッセンさんを救い出すと、発電機がきちんと作動していることを確認しつつ来た道とは別の道を辿りながら漸く出入り口へと到着した。

『にしても、一体ロケット団は何をしに来たんだろう』
「会話を聞いていた限りだと、電力を欲しがっていたみたいだね」
「ここはホウエン最大の発電所だからのう」

お久しぶりという旨の挨拶を交わし、一緒に行動しているということでNを軽く紹介すれば、「リンちゃんもお年頃ということじゃな」などと感慨深く言われて苦笑い。
どうやら要らぬ誤解を招いているらしいが、この手の話は一度そう思ってしまうと弁解すればするほど逆効果になってしまうのだ。
一応、"偶然"一緒に旅をしているNですと強調はしておいたがテッセンさんの表情は終始嬉しそう、というか寧ろニヤニヤに近い。
しかしいくら本人は元気そうに振る舞っていても、テッセンさんはここ数日ロケット団員に捕まっていたためきちんと食事も摂れていないのだ。
年だというのを口にすることは憚られた(言えば年寄り扱いするんじゃない、と怒るに違いない)が、実際時折フラリとする足取りに内心ヒヤヒヤしながらニューキンセツの出口まで歩き、そこから行きと同じくサニーゴにのせてもらいキンセツへ。
その道中にもテッセンさんは「あの時奴等め卑怯な手を使われていなかったら、ワシのライボルトの雷をお見舞いしてやったものだ!」と悔しげに地団駄を踏む(そのせいでサニーゴがたいそうご立腹になっていたので、宥めるのにポロックを何個消費したことか……)
カラクリ屋敷にいたあのお茶目ご老人もそうだが、聞こえよく言えばいつまでも少年の心を忘れていないとか何とか。
元々口数が少ないせいか、Nはひたすら聞き役に徹している。





「あらテッセンさん!ニューキンセツに行くと言ってから何日も帰って来ないで、皆心配していたんですよ!」
『すみません、テッセンさんお疲れみたいなので休める場所とかありますか?』
「ちょっと待ってくださいね、今宿泊用のベッドを直して来ますので」

キンセツシティにたどり着き、ポケモンセンターに一目散に直行する。
ジョーイさんは一目見てテッセンさんに疲労の色が見えるのがわかったようで、慌ただしく奥へと走り去っていく。
大したことではないと言い張るテッセンさんが引っ張っていかれるのを見送り、リンとNも漸く一息つけるとポケモンセンターのソファに腰を下ろした。

『はぁ、なんかカイナシティに着いたときもだけどポケモンセンターに着く度に滅茶苦茶疲れてる気がする』
「というよりも、今のところ二回ともロケット団に遭遇してるってことだね」

このまま行く先々に現れたりして、というNに勘弁してくれと溜息。
今回の旅はバッチ集めでも図鑑完成でもないし、どちらかと言えば観光に近いのだ。
そもそもホウエンに来る時点で、ミナモに着いてデパートで買い物したり美術館散策したり気持ちいい潮風に当たろうとか考えていたのに、最初からロケット団のせいで大迷惑である。

『クロン……とか言ってたよね、新しいロケット団のリーダー』

先日の客船でのジャック事件は結構大きなニュースとなっていて、"ロケット団が復活か!?"という見出しで大々的に取り上げられていた。
ロケット団からの犯行声明などはないが、ホウエン中どころか他の地方にも知れ渡っているに違いない。

『今は彼等も多分暫くはホウエンにいると思うから、これから行動していけば遭遇すると思う』

冗談ではない、昔から旅をすると何故か悪の組織は付き物なのだ。
全く嬉しくないが、もう諦めた。

「……僕も付き合うよ、トモダチを悪事に利用しなんて見過ごせないから」
『そりゃ心強いわよ』

イッシュで、嫌というほどNの実力は見せつけられた。
敵に回すと厳しいが、味方になってくれればたいそう頼りになるに違いない(実際ここまででも助けられてきた)
多分、これはあくまで私の予想だがNも気になったのかもしれない。
昔とは少し違う宗教的などこかプラズマ団に似た雰囲気の持つ、今のロケット団に。







≫あと少し、キンセツで時間を潰します
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