「――つまり彼等はここの電力を利用するためにここに来た、ということだね」

Nの言葉に無言で頷く。
普段鍵が掛けられていて閉ざされているニューキンセツの入り口だったが、ロケット団は外に伸びているキンセツシティへの送電線に手を加えて供給量を減らした。
そうすれば誰かが機械トラブルか何かかと様子見に訪れるとい算段である。
船にも乗り合わせていたしたっぱを取っ捕まえて何が目的か問い詰めたが、電力を欲しているだけでしか知らなくてそこからの目的はわからないとのこと。
それからニューキンセツ内にて野生ポケモンから情報収集していたNに、そのことを伝えれば彼の方も奥に向かう何人かの黒い集団を見たとのことらしい。

『電気集めて何するつもりなんだか……考えられることが多すぎて』

とにかく、奥にいるだろうテッセンさんが心配だ。
ジムリーダーとはいえ多勢に無勢、こういった連中は卑怯な方法も辞さないのだ。
Nもここのポケモン達がたいそう怯えているのでご立腹なようである。

「彼等はトモダチを利用して悪事を働くことをポリシーにしているんだよね」
『確かに、昔彼等を倒していたとき口を揃えてそんなことを言ってた気がする』

ポケモンマフィアだって、と言えばNの表情は若干であるが険しくなる。
それは幾分かイッシュの頃よりも表情が豊かになったというか、感情が表に出やすくなった気がする。
そんな事実に、少し嬉しくなりながら時折見かける他のしたっぱを倒しながら最奥部へと歩く。




『待って、あれ』

前方に数人のロケット団員を見つけ、二人で物陰に隠れて様子を窺う。
自分の記憶が正しければここはもうニューキンセツの一番奥の筈だ。
耳を澄ませば、その中から聞き覚えのある声が聞こえる。

「何に使う気は知らんが、ここはキンセツひいてはホウエン全体の発電に関わる!お前さん達の勝手な目的に使う分はないんじゃよ!」
『この声、テッセンさん……』
「縛られてるみたいだね」

Nが目を凝らして言う、私の視力ではそれが確認出来ないが本当なら一刻も早く助けなくては。

『敵は何人いる?』
「Rが書かれてる制服を着たしたっぱが三人。船にいたようなのはいないみたいだね」
『三人か……いける』

どうやらここには幹部クラスの人員は割かれていないらしい、ジムリーダー一人なら数にものを言わせればなんとでもなると思ったのか。
それに加えてここまでで結構な数のしたっぱを既に倒してきたので、残りはあと三人だけ。
Nにアイコンタクトをとると、あちらも頷いたので勢いよく飛び出した。

『これ以上あんたたちの好きにはさせないわよ、ロケット団』
「げ、船の時の馬鹿みたいに強い女!」

三人のうちの一人はリンを見るなり、顔を歪めた。
そういや船内で締め上げて色々情報を聞き出したドガースを持っていたしたっぱではないか。
残り二人はこんな餓鬼相手に何ビビってんだ、と怪訝そうな顔をするが当の本人の顔は真っ青である(そんなに恐ろしいことをした覚えはないが)
リンの肩に乗っているピカチュウを見るなり、ヒイィ!と情けない声を上げた。

「あの黄色い悪魔、俺のドガースを一瞬で戦闘不能にしたんだぞ!」

黄色い悪魔って。
完全に気後れしているしたっぱ三人に対し、リンはニヤリと笑うと傍らのピカチュウに一言。

『やっちゃって』

ロケット団員三人組の頭の中で、"殺っちゃって"に無意識に変換されたのは言うまでもない。






≫夢主容赦ない子。テッセン氏の口調が不明なので間違ってたらすみません。
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