「ザンネン、不正解!マタノ挑戦ヲオ待チシテマス!」
『な、何回目よこれ……』

ケタケタと笑う仕草を見せるカラクリ人形に思わず破壊衝動に駆られるが、落ち着けと自分を諭す。
ここで自分がキレてしまったら、最悪この屋敷から出れなくなってしまうのだ。
恨めしげな目をカラクリ人形に向けながら、やっと四体目まできたところを一体目まで戻る。
というか、問題がきついんだよ久しぶりにホウエンにきたばかりだっていうのに、キンセツの自転車屋の前に止めてある自転車の台数なんか知るか。
まあカラクリにも何問かのバリエーションしかないから当然同じ問題も出るわけで、そのうちなんとかなるだろう。

『それにしても』

こんな屋敷があったなんて知らなかった。
一応ホウエンは一通り旅した筈だったけど、まだまだ見落としていたものもあるんだななんて思う。
それに加えて、今回は一人じゃないというのもあるのだろう。
この屋敷自体、Nが見つけてなかったら素通りしていたところだ。

"未知なる新たな世界に行けると思ったんだ"

船の中で彼が言ったことを唐突に思い出すと同時に、イッシュでの彼の部屋(とダークトリニティは言っていた)を見たときの衝撃が頭を過る。
幼い頃のNにとって、あの部屋が世界の全てだったのだ。
だからもっと広い世界が見たい、と何の計画もなしにイッシュを飛び出した。
結果的にそれによってあの船の中で再会したのだが。
今の彼にとって、目に写るもの全てが新鮮で惹かれるのだろう。

『私も初心にかえってみようかな……』

小さく呟くと腰に下げられているモンスターボールがカタカタと揺れた。
不安そうなポケモン達の様子に、違うよと語り掛けるように言う。

『まさか、また君たちと旅を始めたばっかりなのに仲間も新しくするなんて言うわけないでしょ』

Nに紹介したのはサーナイトだけだが、他にもホウエンで旅する仲間のモンスターボールは四つある。
彼等もリンの旅の同行者であるNに興味津々のようだ。

『さてと、そんじゃこの忌々しいカラクリ人形をさっさと突破していこうか』





「遅かったね」
『……なにしてんの』

漸く人形達のクイズを突破し(最早出る問題は全て既出のものとなっていたが)、その先の扉を勢い良く開くとそこは和室になっていて真ん中にあるちゃぶ台ではNと見知らぬ人物が茶を啜っていた。
ピカチュウさえもどこから出されたのかポケモンフーズを美味しそうに食べている。

「地下にあるカラクリを解いたら、この人が"青年なかなかやりおるな"って」
「ワシの渾身のカラクリだったからのう、あんなにあっさり解かれたて悔しいけど尚更創作意欲が掻き立てられるものじゃ」

愉快そうに笑う老人こそ、この屋敷の主でありカラクリの制作者である通称カラクリ大王―と本人は自己紹介した。
聞くとピカチュウが落下してそれをNが追いかけた落とし穴の先にも、パズル型の仕掛けが施されていたのだが、その方面が得意分野なNによっていとも簡単に攻略され、リンを待つ間この部屋で寛いでいたらしい。

「ここ最近じゃあ、ワシの仕掛けを突破してくれるようなのもめっきりいなくなってしまったからのう」

解けるまでここから出れないようにしたのじゃ、というカラクリ大王にはた迷惑なことだと盛大に溜息をつく。

「テッセンも数日前にニューキンセツに行ったっきり戻ってこないし、ワシゃ退屈で死にそうじゃ!」
『え、テッセンさんキンセツシティにいないんですか?』
「うむ、発電機の様子がおかしいとか言ってたかの」

前に一度テッセンさんに頼まれて、ニューキンセツに行ったことはあるが数日かかってしまうような構造はしていなかった。
カラクリ大王の口振りだと遊び相手が来なくて拗ねてるみたいに聞こえるが、これは普通に大変なことじゃないか。

「リン、君確かその人に挨拶に行くって言ってたよね」
『そのつもりだったんだけど……』
「行こう、ニューキンセツというところに」

何かを察知したNの表情は真剣だった。






≫カラクリ大王の口調などは忘れたので完全に捏造です。
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