『うわ、雨降ってきた』

キンセツに向かって進み出したのはいいものの、103番道路の方向への分かれ道に差し掛かったとき不意に雨が降りだした。
おかしいな、今朝の天気予報では今日は晴れと言っていたのに。
多分にわか雨なんだろう、ということでNが前方に発見した民家で雨宿りさせてもらうことにした。

「良かったね、そんなに濡れずに済んで」
『取り敢えず、ここの家主に一言断りを入れておかないと』

しかし、玄関から部屋を見回しても家主の気配が一向に感じられない。
もしかしたら留守なのだろうか、そうだとしたら鍵も掛けずに外出なんて無用心すぎるだろう。

「そこの草むらでトモダチが言ってたけど、この家"からくり屋敷"って言うんだって」
『からくり屋敷……?』

確か前にこの道路を訪れた時は少し進んだところにジムリーダーのセンリさんの息子、絶賛コンテスト巡り旅中のユウキを見つけて民家はスルーしていた気がする。
そういやNもホウエンで初めて目にしたポケモンに興奮気味だったが、さっきも早速プラスルマイナンと仲良さげにしていたから、その時に聞いたのだろう。
"からくり屋敷"というからには変な仕掛けとかあるのだろうかと壁に掛けられている掛け軸に手を置く。
……筈だったのだが、何故か掛け軸の壁に触れたとたんにドアがクルリと回った。

『はいっ!?』
「リン?」
「ピカァー?」

そのままドアに巻き込まれ、屋敷に入った時の部屋とは違う、薄暗い空間に変な人形がいくつか置いてある。
後ろの今自分が通り抜けたドアを押してみても、まるで壁のようにピクリとも動かない。
壁と化したドアの向こう側では、リンがこちらに来てしまったのを見てピカチュウとNがどうにかならないかと思案しているところだ。
ちなみにピカチュウ渾身の電撃は残念ながら効果がなかった。

「所謂隠し扉って奴だね。一度しか使えないなんてのは聞いたことがないけど、見た限りこれは先着一名様しか通れないようになっているんだろう」
「ピカ……」

やたら冷静に分析しているNと、心配そうな鳴き声のピカチュウ。
何でもいいから早くここから助けてくれ!と嘆いていると、突然背後で不気味に置かれていた人形がこちらへ寄ってきたではないか。

『う、動いた!?』
「カラクリ一号クイズ!ワレワレノ出題スル問題ニ連続デ正解スレバ、コノサキに進ムコトガデキマス!」
『く、クイズ……?』

オッサンの姿を模した人形が目を光らせて寄ってくるので思わず悲鳴を上げそうになると、いきなりその見た目に似つかわしい高音ボイスで喋り出したので拍子抜けである。
どうやらこっちは部屋から抜けられる解決の糸口が見えてきたようだ。

『N、ピカチュウ!何とかここから出られそうだからそこで待ってて』

最悪わからない問題があってもNの知識を借りればなんとかなるかもしれない、などと思ったがそれは叶わなかった。

「僕もそうしたいんだけどピカチュウが落とし穴に落ちたみたいで、ここは一人しか通れないってのはないみたいだから心配だから追うよ」
『えぇ!?』

なんですと。
さっきはそんなもの見当たらなかったのにとんでもない屋敷だ。
確かにNの言う通り変な仕掛けだらけのここでピカチュウだけにするのは心配だから、ピカチュウをよろしくと声を掛ける。

「うん、そっちも頑張って」

それを最後にNの声は聞こえなくなる。
リンはなんで旅を始めたばっかりなのに次々と面倒なことに巻き込まれてるんだか、と溜息をつきながらおそらく五体ほどいるカラクリ人形をぶっ壊した方が早いのではないかと思い始めるのだった。



「コノ人形ハ壊レルト五秒後ニ爆発シマース」
『マジすか』








≫実際のカラクリ屋敷とは異なります。クイズ人形の時は滅茶苦茶イライラした覚えが。
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