Shadow Exorcist [ 3/7 ]

注意!

・青の祓魔師×黒子のバスケのクロスオーバーです
・燐がバスケしてます
・黒子っちが魔障受けてて悪魔見えてます
・黒子っちが祓魔塾入ります
・黒子っちの入学先が正十字学園です
・誠凜=正十字みたいな感じになってます。バスケ部の先輩ズと一年トリオは健在です
・火神君は出てきません、体力チートの燐もいて火神もいたらそれただのチートや……
 アメリカにいて師弟トリオでキャッハウフフしてます
 そして仲直りした氷室氏と陽泉入ります、それもチートや









「奥村君、バスケ部に入部しませんか?」

放課後。誰もいない教室で唐突に声をかけられて燐はその声の主を探した、しかし見当たらない。幻聴だったのだろうかとそれにしてははっきり聞こえたな、と首を傾げて再び居眠りの体勢に戻ろうとしたところで漸く自分の机の前に誰かが立っていることに気づいた。

「僕はここです」
「うおっ!?」

全く気配を感じなかった。突如出現したとしか思えないようにそこにいる同じ制服に身を包む水色の髪の少年に、思わず仰け反る。滅茶苦茶心臓に悪い。驚かしてすみませんとあまり感情の起伏が感じられない表情で告げた少年に、同じクラスにこんなやついたっけなーとただでさえ少ない自分の頭のキャパシティから懸命に探すがやっぱり思い出せない。未だにクラスの半分の名前と顔が一致していないから仕方ねーかと開き直ることにする。

「あの、俺に用?」

燐はお世辞にも社交性のある人間とは言えない。性格的には人好きのするタイプではあるが、それよりも立ち塞がるのは中学までの不良というイメージ故に、また頭の良いお坊ちゃんお嬢様ばかりが通う正十字学園で授業中寝てばかりで授業にまったくついていけていない燐は明らかに浮いていた。入試自体後見人の理事長の力による、いわゆる裏口入学という奴なのだから必然と言えば必然である。だから自分に話しかけてくる存在は珍しい。

「勧誘です。奥村君、バスケ部に入りましょう」

誘われてしまった。どうして俺を誘うのか……うーんと考えて思い出したのは、先日の初めての体育の授業でのことだ。授業はバスケットボールだった、最初と言うこともあり適当に試合形式のゲームをした。元々運動神経はずば抜けていたが、悪魔として覚醒してからは文字通り人間離れした身体能力を有している。弟の雪男に「絶対セーブして、人間の枠からはみ出た動きはしないこと」と口を酸っぱくして言われていたのを思い出してそれなりに適当にやっていたのだが、途中からつい楽しくて少しだけ本気を出してしまった覚えがある。それで終わった後にクラスメイトから「奥村すごいな!」と言われたり、いくつか運動部に誘われたりしたが丁重にお断りしておいた。そもそも燐がこの正十字学園に入学したのは、暢気に高校生活を楽しむためではない。あくまで祓魔師になるためなのだ。それならば、祓魔塾に通うだけで高校には入学する必要は無かったのではないかと思うのだが、あの身体の成分全てが胡散臭さで構成されているようなピエロ理事長(一応後見人)が勝手に決めたことなのでどうしようもない。それにこっちは塾の授業が始まったかと思えば、講師として弟が教壇に上がっていたり。実はその弟が既に祓魔師でした、なんてカミングアウトされたばかりで混乱しているのだ。

「奥村君?」

相変わらず無表情だが少し怪訝そうに覗き込んでくる。どうやら慣れない考え事をしていたせいで意識が他所に飛んでいたようだ。

「あのさ……名前聞いてもいいか?」

覚えて無くて、と恐る恐る尋ねれば、すぐに「同じクラスの黒子テツヤです、ちなみに君の斜め後ろの席です」と答えが返ってきた。残念ながら全く記憶に無い。だが当の黒子の方は全く意に介した様子もなく、慣れてますからと告げた。
いずれにせよ部活の件は断らなくてはならない。

「部活勧誘なら、悪いけど俺部活は……」
「奥村君、バスケ好きですよね」
「へ……?」

疑問系でなく断定だった。驚いて口を開く燐に、黒子は続ける。

「覚えていないと思いますが先日の体育でのミニゲーム、僕と奥村君は同じチームでした。最初は運動神経が飛びぬけているだけだと思ったんですが、少ししてわかりました。とても楽しそうにプレイしていることに」
「そ、そう見えたか?」
「はい。人間観察が趣味なので」

その通りだった。これは弟の雪男にも言っていない話だが、燐は小学生くらいからバスケットボールというスポーツに非常に興味があった。きっかけはテレビ中継で見た海外の試合だったと思う。でもバスケは一人で楽しむには限界があった。近くにあるストバス場にも足を運んでみたことはあるが、当時から近所でも悪い意味で有名だった燐には同じくらいの子達が楽しそうにプレイしていても仲間に混ぜてとは言い出せなかったのだ。忘れ物のボールを使ってテレビで見たのを真似てシュートしてみたり、ドリブルしてみたぐらいだった。

「確かに俺はバスケ好きだよ。けどたいしてプレイしてないし、ぶっちゃけルールもイマイチわかってない素人だ。第一、俺は絶対に部活は出来ないんだ」

当然雪男も駄目だというだろうし、メフィストも笑うだろう、お前は何しにここに来ているのだと。しかし悪魔だの祓魔だの言うわけにもいかないので、中々引いてくれない黒子をどう断ったものかと頭が痛くなってきたところで、誰もいなかった教室に突如場違いな声が聞こえてきた。

「いいじゃないですか部活。青少年よ、青春しなさい!」
「理事長?」

声の主は燐の知っているピエロスタイルで教室に入ってきたメフィスト・フェレスその人だった。流石に高校の方ではその格好で通していなかったのか、趣味が悪いとしか言いようのないその服装に黒子が目を瞬かせている。

「私は許可しますよ、奥村君バスケ部に入部なさい」
「おい、どういうことだよ。俺は部活している暇なんて」
「理解者は一人でも多い方が良いということです」
「は?」

何を言っているのかさっぱりわからない。理事長と知り合いなのかと問いかけてくる黒子に後見人ってやつなんだと説明する。しかしその直後メフィストの口から飛び出した言葉に驚かされることになる。

「時に黒子テツヤ君、君は悪魔が見えていますね?」
「悪魔、というのかは知りませんがそこら中を飛び回っている黒いものなら昔から見えています」
「……え、えええ!?」

あまりにも平然と、普通にしているので全く予想もしていなかった。燐自身悪魔が見えるようになったのは覚醒したごく最近のことであるが、初めて見えたときは本当に驚いたし不気味に思った。幼少から見えていたという弟の雪男も、養父に祓魔師を目指さないかと提案されるまで怯える日々を過ごしていたと語っていた。それをことごとくスルーして、ごく普通に生きていたというならとんでもないスルースキルの持ち主である。
黒子曰く、悪魔だとは理解しておらず所謂幽霊だと思っていたらしい。霊感があると。実際幽霊=ゴーストは悪魔の気の眷属に分類されるので魔障を受けて悪魔が見えるようになることは、霊感があるようになるのと同義なのかもしれない。燐にはそこらへん全くわからないので割愛。
悪魔について何も知らない黒子にひとしきりアッシャーだのゲヘナだの説明したメフィストは、嬉々として黒子に告げた。

「黒子君、君が祓魔塾に入塾して祓魔師を目指すなら奥村君のバスケ部入部を許可します」


(それから暫く経って、メフィストの執務室にスラムダンクが全巻揃っているのを見て、これが原因の一端だろと思ったのは言うまでも無い)







正十字学園は学業以外にも美術、音楽、スポーツなどあらゆる方面で優秀な生徒が入学している。特にスポーツに関しては野球やサッカー、バレーボールでは大会等で目覚ましい成績を残しているものの、どういうわけか男子バスケ部は存在しておらず昨年になってようやく当時一年生の生徒主導で作られたものである。創部一年にしてインターハイ予選決勝リーグにまで勝ち進んだ実力のあるチームである。


当然ながら雪男は反対した。本当に祓魔師目指すつもりあるの?だとか兄さんは馬鹿なんだから部活なんてやってる暇なくて少しでも勉強しないと、だとか兄さんは馬鹿だからセーブしてるつもりでもボロだして人外だってすぐバレるよだとか散々な言われようである。しかも何回も兄さんは馬鹿というフレーズを聞いた気がする、可愛かった昔の雪男は一体どこへいったのか……解せぬ、と気が遠くなった。しかしどうしてここまで燐にこだわるのか、あっさり拍子抜けするくらいすぐに祓魔塾に入ることを了承した黒子と、メフィストの言葉によって渋々ではあるが燐のバスケ部入りを許可した。祓魔塾や騎士団からの召集とバスケ部での活動が被った場合には、必ず前者を優先するという条件はあるが。
その理由の一端として、偶然にもバスケ部の顧問が正十字学園の教諭と祓魔師を兼業している上二級祓魔師で、雪男の目が届かないときも監視が出来るというものだった。後に顧問の件を教えると、黒子も驚いたようだった。曰く、影が薄いことに定評のある自分よりも部内では存在感がなく、顧問といっても実質監督として指導しているのは二年の女子生徒だという。

「正式に入部する前に、一つ黒子君にお伝えしておくことがあります」

理事長室にて燐と雪男、双子の後見人であるメフィストの話がようやくまとまったところで聞かせられない話もあるので外で待たされていた黒子に最後に一つとメフィストが口を開いた。

「実は奥村君は悪魔と人間のいわゆるハーフなんですよ、それでも構いませんか?」
「フェレス卿!」

青焔魔の、というのは伏せたが人間側から見て悪魔とのハーフの祓魔師は少なからず迫害を受けることがある。当然といえば仕方のないことなのかもしれない、彼等の目的は悪魔の殲滅で半分でも敵の血を引く者に背中を預けることは容易には出来ない。いくら黒子に悪魔の知識がないとしても、簡単に他人に話されては困ると雪男は咎めた。
しかしそれに対して驚くほどに黒子の返答は簡潔だった。

「それがどうかしましたか?」

寧ろ驚いたのは燐だった。幼い頃から悪魔だと罵られ、実際蓋を開けてみれば本当に悪魔の子だった燐にとってそれを聞いてもなお何とも思わないという黒子の反応は初めてであった。

「お、俺……耳尖ってるし牙あるし、尻尾まで生えてるんだぞ?」
「尻尾が他人に見えるのは困りますから、僕も出来るだけカバーしますよ」
「そういう意味じゃなくて!」
「奥村君は悪魔じゃありません、人間です」

はっきりと言い切った黒子に、少しだけ今は亡き養父を重ねた。でもどうして彼はここまで。

「だから一緒にバスケして、祓魔師になりましょう」

差し出された手を、燐は取った。








翌日、入部の前にまず見学に行こうと放課後体育館へ向かった。正十字学園の平日の部活動は原則六時までと定められており、また祓魔塾の時間は六時半からなので同じ日に両方に出ることは十分に可能である。雪男として出来の悪い兄に自習をさせるつもりでいたのだが仕方ない。

「君が黒子君がスカウトしてきたっていう奥村君?」

先程からショートの女子生徒にやたら見られて、燐はなんだか恥ずかしくなった。いや、別に彼女は燐のタイプではない(胸の大きさ的な意味で)のだが女子に負の感情以外の視線を向けられることは珍しいのでドギマギしてしまう。

「奥村奥村……どっかで聞いたことあるような」
「今年の新入生代表挨拶の奥村雪男君の双子のお兄さんらしいですよ」
「ああ!あの眼鏡の……似てないわね」
「よく言われマス」

正十字学園に入学してからわかったことだが弟の雪男はとにかくモテる。昔の泣き虫な雪男を知っている燐としては非常に複雑な心境であるのだが、成績優秀な爽やかイケメンとくれば世の女の子達は放っておかないのだろう。身長も兄より高い。

「身長は平均程度、寧ろバスケやるには少し足りないわね。まあいいわ、それじゃあ上半身ちょっと裸になってくれる?」
「え、ええ!?」
「カントクは人の身体を見ただけで能力値が数値化してわかるんです」
「そ、そりゃスゲーな……」

いつの間にか隣に立っていた黒子に驚きつつも(先程先輩らしき人にも突然背後に立つな!と言われていたので影の薄さはここでも発揮されているようだ)体操着に着替えていたのを、上に着ていたシャツを脱ぐ。やっぱりじーと見詰められて所在なさげにしていると、カントク改め相田リコはうーんと考え込むような表情で黒子に聞いた。

「……本当に彼、フリースローラインから跳んでダンク決めたの?」

どう見てもこの身体では無理だと思うんだけど、とリコが呻く。それもそのはずだ、燐の驚異的な人間離れした身体能力は半分が悪魔であるが故の特殊なものであって燐の筋肉だとかが優れているわけではない。おそらく身体的には平均的な男子高校生と変わらないのだろう。ええ、確かに見ましたという黒子に同じく一年で入部したばかりの三人のうち一人(多分福田とか名乗っていた気がする)が俺も体育合同で見ましたよ!と同調した。

「この足の筋肉のつき方だとどう考えても無理なんだけど……そうね、手っ取り早く彼の実力を見せてもらうために一年対二年で試合してみましょう」




とにかく不思議な感覚だった。
最初から割りと本気出してダンクを決めまくった燐に三人もマークがついてきて身動きがとれない。かといって無理にいこうとすればファールになるし、ドリブルやシュートの技術が明らかに劣る分遠くからシュートするのは厳しいし、トラベリングにならないように思い切りとんでダンクで決めるしかなかった。しかし同じ手がそう何度も通用しない。ボールを持っていなくても二人もマークがつく中、どうしたものかと思っていたところで突如マークの死角からパスが回ってきた。しかしその方向には味方は誰もいない。首を傾げつつもすぐさまダンクで決める。そんなことが何回も続き、結局時々他の一年もシュートを決めつつ殆どの得点を燐が取り一年チームが勝利した(何故か黒子は一点も取らなかった)

「ホント、流石としか言いようがないわねそのパス技術」
「え、さっきのって黒子がやってたのか!?」
「そうです」
「気づかないで受け取ってたんかい!それよりも黒子君。彼、どう見ても素人じゃないの?ドリブルもシュートもお粗末、ディフェンスの仕方もまるでわかってないじゃない。あんなプレイでよく体力が持つか不思議で仕方ないわ」

始終飛んだり跳ねたりばかりしていたのを目敏く見つけていたリコに黒子も頷く。

「はい、多少は経験があるようですが。恐らく初心者に毛が生えた程度だと思います」
「どういうつもり?初心者をスカウトしてくるなんて」
「でも素質は並じゃないですよ」
「……確かに、ポテンシャルは怪物並だわ。一から教えることになるでしょうけど」
「それじゃあ……!」
「寧ろ大歓迎よ、ようこそ奥村燐君」


それから正式な部員として先に挨拶した一年以外の、他の二年生の自己紹介があった。途中から突然キレていた眼鏡の先輩は主将の日向。時々駄洒落を口走るのは伊月、一言も喋らない身長が高いのが水戸部……などと忘れないように顔と名前を頭に詰め込んでいく。

「あとそれから、本入部の前に明日の朝、屋上から今年の抱負を宣言してもらうから。ちなみに達成できなかったら、全裸で好きな子に告ってもらいます」
「は……!?」








「へー、黒子ってそんなすごいところでレギュラーだったのか」

部活の時間を終えて、一緒に塾へと向かう。鍵があるので適当なドアを使えばあっという間に辿り着けるのだが他の生徒に不審に思われないようにと言われているので、取り合えず人気が少ない燐の旧男子寮に向かって歩くことにした。途中学園内に店舗があるファーストフード店(この学校はやたら広いので他にも色々な店がある)でバニラシェイクを買って飲む黒子はなんだか嬉しそうだ。「正十字学園は全寮制ですけど、敷地内にマジバがあるのでここに入学しようと思ったんです」と豪語するあたり、本当に好きなのだろう。
途中、黒子の中学時代の話を聞いた。特に燐から聞いたというわけではないのだが、黒子曰く「僕だけ奥村君のことを知っているのはフェアじゃないですから」ということらしい。そこで出身の帝光中学は日本でも屈指の強豪校であり、黒子自身そこで六人目として試合に出て見事三連覇したと聞いて素直に感心の声を上げた。六人目の意味がわからないのでそこは聞くのも忘れずに。

「でも、僕は帝光の理念は好きではありません。勝つことよりも大切なものがあると思うんです。だから僕はキセキの世代を倒すために彼等と別の高校に進学することを決めました」
「キセキの世代って、なんだ?」
「十人に一人という天才が五人集まってそう言われています。実際物凄く強いです。今奥村君が挑んでも瞬殺されるくらいに」
「そんなに強い奴がいるのか」
「はい、間違いなく全国大会で彼等の所属する学校のうちのどこかが頂点に立ちます」
「でも、そいつらを倒すつもりなんだろ?」
「そのつもりです、奥村君。僕は影です。影は光が強いほど濃くなる。だから僕は」



――――奥村君の影になります。




それから初めて一緒に受ける祓魔塾の授業で爆睡し、黒子に苦笑されることになる。












春休みあたりにストバスでアメリカに戻る前の火神と黒子が会って、意気投合して「今度日本に来たらまたバスケしよーぜ!」なのも書きたい

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