八万企画
選択肢を間違えた



私と虹次さんは所謂恋人という関係だ。
告白は私からで、正直な話オッケーしてもらえるとは思っていなかったので本当に嬉しかったのを覚えている。
不器用な人だからあまりストレートには言ってくれないが、さりげないところで気遣ってくれたり慈しんでくれているのを感じる。
好き、本当に大好き。
しかし今私達が置かれている状況は戦いの日々。

幼い頃にエデンに両親を殺され、自分も殺される直前で保護された私はRE-CODEの皆の手伝いが出来るよう、主に情報面だとか生活面のサポートをしていた。
もう普通の生活に戻れないことは重々承知の上でついてきたわけだが、虹次さんは再三私にまだ引き返せると言ってくれた。
それでも残り続けた、彼の側にいたかったから。
知っている、あの日エデンに殺される一歩手前で救出してくれたのはこの人だと。
捜シ者が教えてくれたし、何より記憶に深く刻まれていて間違える筈がない。
捜シ者に付き従って、大神達コードブレイカーと戦いやがて捜シ者は死んだ。
私達の負け。でも不思議と悲しくはなかった、捜シ者は多分ずっと望んでいたのだと思うから。
そして今度は大神の大きすぎる能力を警戒しての、エデンからの大神への実質抹殺通告。
つくづくエデンとは腐った組織だ、散々利用して貢献させておいて噛み付く恐れのある力があるから殺すなんて。
この事態を予期していた捜シ者の意思によって、RE-CODEは大神の味方についてエデンと戦うことになった。
正直苦しい戦いだと言わざるを得なかった。
コードブレイカーよりも更に強力な存在、コードネームの猛攻は凄まじかった。
その間に私達は合間を縫って愛を育んだのだが、ある時虹次さんからの言葉で目が覚めた。

「お前だけは絶対に守りぬく、死なせはしない」

私は彼にとって足で纏い以外の何者でもないのではないか?
実際私を庇ったが故に怪我を負ってしまったこともある。
このままでは私の存在が彼を殺してしまう。
そう思い至ってからは気が気じゃなかった、いつコードネームとの戦いが起こるかわからない。
そして遂に決断を下した、彼の前から姿を消そう。
決めるに当たって、八王子さんには相談をした。
照れ屋であまり恋愛に免疫がない可愛い人(それを言ったらまた真っ赤になった)だが、真摯に相談に乗ってくれた。

「名前が決めたことなら反対はしない、けどちゃんと別れの挨拶くらいはしていけ」

そしてさよならを打ち明けると決断して、私の仮住まいに虹次さんを呼び出した。

「ごめんなさい、私と別れてください」

自分勝手なことだとわかっている、けどこうでもしないとこの人は私を庇って死んでしまうかもしれない。
そんなのは耐えられない、それくらいなら愛はいらない。
暫し呆然としていた虹次さんだったが、やがて言葉の意味を理解してくれたようだった。

「そうか……名前、お前は俺の前から消えるつもりなのか」
「はい、もう私には戦う意志がありません。こんな女が近くにいても害にしかなりませんから」
「わかった、それならもうここから出る必要はないな」
「え?」

ぐるりと視界が反転して、床に引き倒されていることをようやく理解したかと思えば腕をまとめて頭上に挙げられそこからカチャリ、という金属音が聞こえた。
え、一体何が起こった?
視線を頭上に向ければ、両の手首には手錠がはめられていて、そこから伸びた鎖は虹次さんの手の中にあった。

「心配だった、戦場に連れていけばいつお前を失うかわからない。だが頑固だから一人だけ安全なところで待つなんて嫌だと駄々をこねるからな」

虹次さんは笑みを浮かべていた、とびきりに優しい笑みを。
何故かそれにぞわりと悪寒が背筋を伝い、反射的に遠ざかろうと身体を捩るが繋がれてしまったせいで上手くいかない。

「だがもう大丈夫だ、ここにいれば安心だからな。心配するな、名前がここで待ってくれれば俺は死なない」

逃げられない、本能的に悟った。
予想通り、手錠に繋がれたまま私はこの部屋から一歩も出れなくなった。
そして毎日彼の帰りを待ち続けるのだ。

「愛している、名前」




虹次さんのキャラが迷子ですみません……!アニメ出てくれよおおお!!
蝉時雨様リクエストありがとうございました。
遅くなってすみません!
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