八万企画
ストーカーは二人もいらない



※京都弁偽物注意報




まただ、帰り道に後ろから尾行されている気配を感じて深くため息をつきながら歩く速度を早めた。
違和感を感じたのは数ヶ月前のこと、いつもどこからか見られているような視線を感じるようになった。最初は勘違いかとも思ったが、ある日郵便受けに投函された封筒の中に写真、しかもどう見ても隠撮りされたものがあってサァーと血の気が引いた。
それから私物がどんどん盗まれていく。厄介なのはただ盗むのではなく全く新しい新品に交換するのだ。最初はシャーペンとか消しゴムといった文房具だったがどんどんエスカレートして財布が長年使っていたのと同じ新品に取り替えられていた時には本気で寒気がした(中身のお金には全く手をつけられていなかったのが逆に怖い)
他にも家に盗聴器が仕掛けられていたりと毎日のようにストーカー被害に頭を悩ませていた。



「それは大変だな」
「警察に相談しようとも思ったんですけど、まだ被害届出すには証拠が弱いかなって言われてしまいまして」
「隠撮りされた写真があるんだろ?」
「見た瞬間怖くて捨てましたよ。今となってはちゃんと取っとけばよかった……!」

サークルの先輩である夜先輩は、困ったことがあったら相談してくれよと心配そうに話を聞いてくれた。本当にいい先輩だ、優しいしイケメンだしどうしてこれで彼女がいないのか不思議なくらいだ。実際頻繁に告白されているが全て断っているらしい、勿体無い。以前そう言えば「好きな子がいるんだ」と少し赤面しながら言っていた。
今日はサークルの活動自体は休みなので先輩と適当に談笑しつつ、電車の時間がちょうどよくなったところで帰ることにした。

「送っていこうか?」
「大丈夫ですよ、今日はバイトもないので明るいうちに家に帰りますし」

それよりも先輩、ちゃんと意中の人にアプローチするんですよ!と言ってその場をあとにした。




「今日は帰るの早いんやねえ」
「バイトシフト入ってなかったから寄り道もしないで帰ることにしたの」
「……例の、ストーカーどないなりはったん?」
「うーん、最近は静かだけど相変わらず見られてる感じはしたかな」
「俺も気をつけてるけど用心するにこしたことはあらへんからなあ」

特に何事もなく一人暮らししているアパートに着き、鍵穴に差した鍵を回そうとしたところで隣の部屋に住んでいる志摩廉造君がちょうど出てきたところらしく声をかけてきた。
志摩君は仏教系の大学だが頭はピンクだし、妙にチャラい。女好きで何人も可愛いことデートしているところを見かけたことがある。
困っている女の子をほっとかない!というのをモットーにしているらしくストーカーの件に関しても何度か相談に乗ってもらったり、中に誰かいるんじゃないかと怖い時にはインターホンを押して出てきてもらったりすることもある。
頼りになるのだ、チャラいけど。





「いらっしゃい、ストーカーさん」
「……何を言っているんだ、ストーカーはお前だろ」
「毎日のように尾行してる奴が何言ってはるん?しかも人のもの盗って新品にすり替えるとかタチ悪いわー」
「よく言うよ、人の部屋に忍び込んで隠し撮りしたり盗聴器まで仕掛けて」

男達は互いに相手を彼女に害なすストーカーだと思っていた。
だから守らなければ。
自分は相談されていて頼りにされているのだと優越感に浸っていた。

特筆すべきことではないかもしれないが、現在この二人が対峙しているここは名前の部屋の中だった。
勿論家主はそのことを知る由もない。





どう見てもギャグですありがとうございます。関連性があんまりない二人を一緒に病ませたらこうなった/(^o^)\
遅くなってしまいすみません、躑躅様ありがとうございました!
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