∵ エピローグ
「おはよー、俺いつ寝てたっけ」 「僕が帰った時にはもう全部片付けも済ませて寝てたよ?課題もちゃんと終わらせて感心感心」 「……それは名前が鬼コーチだったんだよ」
週の始め、少し寝坊して慌てて朝食の準備をしていた兄が「あれ、この皿こんなとこに片付けたっけなー」と首を傾げているのを見ながら雪男は、夜は暗くて気づかなかったが朝起きて部屋に僅かな違和感を感じたのを思い出した。 築何十年も経ったそれにしては床が真新しいような、最初からそうだったと言われればそうだったような気もするが。
「なんか冷蔵庫の中身が減ってるような……」 「どうかした?」 「あーいや、多分俺の勘違い」
そのあとすぐに朝食と弁当が出てきて急いで朝食を食べると、弁当を鞄に仕舞い寮を出る。 高等部に到着したところでそれぞれ特進科と普通科の教室に分かれる。 途中前を歩く名前を見つけた。
「あ、おはよう」 「あの名前さんは一昨日現れた未来の僕……と言っていた人がどこに行ったかわかりますか?」
兄に聞いてもさあ、わからないと言っていた。 昨日はこの時代に用事があると言ってどこかに行ったらしいが結局どうなったのだろう。
「ああ、あの人なら帰ったよ?」 「帰った?」 「うん、用事はもう終わったから自分の時代に」 「それならいいのですが……」
結局本当に未来の自分とやらなのか、目的はなんなのか分からなかった。 しかし顔立ちから黒子の位置まで自分と同じだった、あれを未来の自分と認めなければ誰なのか。 現に名前が警戒心ゼロで接していたので問題はないだろうと判断していた。
「雪男」 「……どうかしました?」 「ううん、何でもない。それじゃあそろそろ朝礼始まるから教室入るね」
同じ特進科だがクラスは違うので別の教室に入っていく。
(……何だ、今の感じ)
確かに名前を呼ばれたのに、名前が別の誰かを呼んでいたかのような感じがした。
END
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