「海だーー!!!!」
「…………」
「ねぇ!ギアッチョ!海!海だよ!」
「見りゃ分かる。黙っとれ」
「なんだよ、もうー。まだ怒ってんの?」
「なんでオレが怒らねぇと思ったんだよ逆によォ」
「買ったばかりの水着を初めて見せるのは海の方が断然良いじゃん」
「だからってなんでイルーゾォなんかと一緒に買いに行くんだよ」
「だってひとりで暇そうにしてたから」
「…………」
「暇じゃあねぇよ!って言いながらもついてきたし何だかんだ一緒に選んでくれたんだよ。マジで面倒くさい性格してるよね」
「問題はイルーゾォの野郎がお前の水着姿をオレより先に見たって事だろうが」
「見てないよ。試着室から出てないもん」
「あぁ?」
「流石にそれはない。つーか私が試着室にいる時にイルーゾォはそれどころじゃあなかったし」
「何があったんだよ」
「ほらイルーゾォがさ、惚れてる花屋のお姉さんいるじゃん?」
「あー旧アジトの近くの花屋にいた女か。去年だったかイルーゾォがその女と海に行ったって言ってたよな」
「そうそう!そのお姉さんが知らない男と歩いてるの見たイルーゾォが失恋したって泣き喚いてたのが最近かな」
「女々しいヤツだな」
「その男は結局お姉さんの弟だとかで、イルーゾォの早とちりだったんだけど」
「はた迷惑なヤツだな、本当によ」
「ばったり水着売り場で会っちゃったんだよね。イルーゾォが私の水着選んでるところで」
「……うわ……」
「私とイルーゾォじゃあ兄妹です!って言うの無理があるじゃん?イルーゾォもテンパってはっきり後輩って言わずにアワアワしてるから余計に怪しくて」
「いやもうそこまで来たらオレ客としてその場を目撃したかったわ」
「お姉さんもお姉さんで挨拶だけして去ってっちゃうしイルーゾォも追いかけないしで……。試着室から出てきた時は蹲ってたもん」
「180cm超えの男が水着売り場の試着室の前で蹲っててよく通報されなかったな」
「帰り道にまたべしょべしょ泣きながらフラレた嫌われたって言うし宥めるの大変だった」
「そんなに情緒不安定なヤツだったか?」
「まぁ……という訳で!私のこの水着姿は初公開な訳ですが、どうですか?」
「……良いんじゃあねぇの」
「反応薄いなぁ!あんだけ怒ってたんだからもっとちゃんと褒めてくれても良くない?」
「……似合っとる!似合っとるが!色々見え過ぎじゃあねぇのか?」
「水着ってそういうもんでしょうが」
「いや駄目だ。お前、これ着とけ!」
「なんで折角の海に来てまでギアッチョのパーカー着なきゃいけないんだよ、あっつい!」
「あっテメ!コラ!パーカー羽織れ!走るな!乳が出るだろうが!」
「大声でなんて事言うのバカー!!!!」
製氷機と瞬間湯沸かし器 その29
見たいけど見せたくないの
2021/08/01〜2021/09/02
馬鹿ね、本当貴方って