▼61:デュオとベッリーナC
ナランチャがスクアーロのクラッシュをエアロスミスで撃つ事に成功したので、今度はその硝煙を追ってくる事が出来るようになった。
下水に拐われてしまっていたジョルノも店内の水槽の中へと戻ってきている。
『まずい……かなりまずい。完璧に今……君のクラッシュの移動が探知されています』
『まさか……ナランチャがここまでやるとは』
『いやジョルノだ……。ジョルノが敢えて自らエアロスミスの機銃をくらったから……こんな事態になってしまったんだ』
『くそ……どうしても消せねぇ……水の中でも……』
相変わらず見張りと盗聴を続けるソルベとジェラートはジェラートのスタンドであるレディオヘッドから聞こえてくるスクアーロとティッツァーノの声に耳を傾けていた。
「スクアーロがくらったのはスタンドの能力の弾丸だ。その硝煙は水の中だろうと出てるみたいだな」
「消えたと思ってもほんの少しのにおいでもナランチャには探知できるのかもね」
「今いる場所から移動した瞬間その場ですぐに攻撃してくるだろう」
「なんとかして姿を消さなくちゃって思うよな」
「ああ。このままジョルノを連れてナランチャの探知できない所で姿を消せばヤツらの勝ちだ」
「さぁて、ナランチャはどうするのかな?」
ジェラートがラジオのボタンを回して、ナランチャの方にチューニングを合わせる。
盗聴している二人には解らない事であったが、ナランチャは敵を観察していて気付いた事があった。
それは敵スタンドであるクラッシュの水から水への一回の移動距離がせいぜい2〜3m以内のジャンプだという事である。
遠隔操作のわりには超スピードの能力を持つ代わりの弱点だろう。
そうして攻撃を繰り返していく内に照準が正確になり、敵スタンドも負傷のせいか移動のスピードが落ちてきている。
コンロの上に置かれた鍋に移動したクラッシュを撃ち、ジョルノを引き離し水から出せた。
『やったぜッ!ジョルノが水から出た!ジョルノは呼吸を止められただけだ!ジョルノはこれで助かる!蘇生させれば助かるぞッ!』
「……まずいな……」
「最初からこれを狙ってたのか……伊達に親衛隊はやってないってワケだ」
ラジオから聞こえるナランチャの声の後ろに微かに響くシューシューという音にソルベとジェラートがピクリと眉を動かす。
『よしッ!このままあと一撃トドメをヤツに撃ち込めばおしまいだッ!くらえッ!サカナ野……はっ!!このにおいは……!!』
「ナランチャに撃たれた鍋から漏れた湯で火を消しガスを出させたな」
「火花を散らせてガスに引火したら焼け死なないまでも、そこらじゅうが燃えて二酸化炭素を探知するナランチャにはスクアーロを区別出来なくなるだろうね」
さて、どうするかと二人が思っていると、ラジオからナランチャの声とエアロスミスのプロペラの音が響いてくる。
『撃てねぇんなら撃てねぇでよォォォ!!テメーを殺る方法はあるぜェェェェェーーーッ!!』
『ウガッ!!』
ソルベはスナイパーライフルを動かしスコープを覗いてスクアーロを見た。ナランチャの攻撃をくらったスクアーロが新たに出血をして屋根の上に倒れ込んでいる。
「あ、」
ジェラートが不意に洩らした声にソルベがスコープをレストランの方へ戻した。テラス席にいるブチャラティたちの中にアデレードの姿を見つける。
「やっとオンブラの顔が見れたァ!」
「相変わらずのベッラだ。しかし何故亀から出てきた?」
「ん?ん――……」
ジェラートはラジオ虫をアデレードのいるテーブルへ向かわせた。
『あら、可愛い』
アデレードが小さくなったムーディ・ブルースの入ったグラスを掲げながら言う。
下半身や片腕を魚の鰭のように変化させながらも頭部はムーディ・ブルースのままであり変身は途中である。
『敵への再生追跡をしているのね』
『Sì.しかしこれ以上は出来ねぇ!敵がさっきこのテーブルの上のこのコップの中にいた事は確かに解る。……しかし!いたのは一瞬だけでそこから先はムーディ・ブルースは変身出来ないし進む事も出来ねぇ』
『……どういう事だ?アバッキオ』
『解らねぇ……。瞬間移動の能力かもしれん』
『或いは私と似た“あるモノ限定”で移動出来る能力……』
『…………』
『しかし答えは出ない。この敵の正体への再生はビデオテープが切れたように先へ進まねぇ』
ブチャラティとアバッキオ、そしてアデレードの会話を聞きながら双眼鏡を覗くジェラートがもしかしてさぁ、と口を開いた。
「オンブラって今好きなヤツがいるんじゃあないかな」
「プロシュート以外にか」
「まさかでしょ。プロシュートなんかとっくの昔にフラレてるじゃん。アイツがいくら執着したってオンブラは戻ってこないよ」
「あのチームの中にいるって意味か」
「Sì.sì!オレの勘だけどね……相手は多分ブチャラティだよ」
「ジェラートの勘は当たるからあまり聞きたくなかったな」
「どうして?オンブラが誰を好きだろうとオレたちの可愛いオモチャなのは変わらない」
「……あぁ。そうだったな」
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