▼45:最終指令とベッリーナ@
サンタ・ルチア駅で無事にOA-DISCをゲットしたジョルノたちはナランチャが乗ってきたボートへ乗り込んだ。亀の外に出ていたアデレードに促されてギアッチョもそのまま亀の中へ入る。
ジョルノがブチャラティにOA-DISCを渡し、敵襲にあったことを伝える。
敵の正体についてはギアッチョが話した。
アデレードが列車の中でプロシュートから聞いていた男だ。
「そちらは君の仲間に任せよう。今はこのディスクの中を見るのが先だ」
ブチャラティはそう言うと、パソコンにディスクを入れた。
やはりボスからのメッセージである。
トリッシュの護衛についての感謝の言葉から始まり、ボスがトリッシュと安全に出会うための方法であり自分たちへの最終指令であることが記されていた。
最終。その文字にブチャラティは少しだけほっとして、すぐに気を引き締め直す。
何事も肝心なことは最後にあるものだ。気を抜いてはいけない。
指令と少しでも違った行動を取ったならば“それを悪意ある危険信号とみなす”と念を押されていた。
「発信器までついてるなんて、流石。用心深いわね」
ディスプレイを見つめるブチャラティの背後からアデレードは顔を近付けて画面を読み上げた。
サン・ジョルジョ・マジョーレ島に向かい、教会の塔の上にトリッシュを連れてくること。
それにはトリッシュと護衛ひとりとし、その者のナイフ・携帯電話等あらゆる物の所持を禁止する。
ディスクを入手してから15分以内に島へ上陸し、護衛以外の者は船上にて待ち上陸を禁止する。
「護衛ってブチャラティ、あなた?」
「そのつもりだ」
「……私ね、やっぱり気になるの。ボスの本当の狙いが他にあるんじゃあないかって」
「そこまで心配する根拠をまだ聞いてなかったな」
「最初に違和感を覚えたのはポルポの葬式でリゾットが言っていた何者かがトリッシュを拐おうとしてたって話よ。それについて誰かが彼らに濡れ衣を着せようとしているということ。トリッシュを拐おうとした人物と濡れ衣を着せようとしている人物は恐らく同一人物、もしくはそれに命令された者の仕業だと私は思う。それからムーロロ。ボスの情報をわざと流してリゾットと対立させようとしていた彼の動きは本当に杜撰だわ」
アデレードの話にブチャラティは顎に手を置いて考え込む。
「そして何より引っ掛かるのはペリーコロさんの言葉よ。彼は死ぬ間際に“どうやって安全にトリッシュが父親のボスと会うのか”と言い残したわ。最も重要なのはその点であり、何よりも優先させなければならない事だと。そしてここにも同じように書かれている」
アデレードがディスプレイに表示されているボスからのメッセージの一文を指でなぞる。
「“わたしと娘が安全に出会うための方法”……これって本当に二人の意図が同じだという前提で書いてあると思う?」
ブチャラティはペリーコロの最期の言葉を思い出していた。アデレードは更に続ける。
「謎の誘拐犯。そしてムーロロ。暗殺者チームへ濡れ衣を掛けさせようとしていたのは明らかでしょう?そしてこのメッセージの一致。余りにも出来すぎだと思わない?」
「……ペリーコロさんもボスに命じられてトリッシュを狙ったと?」
「解らない。彼は本当にトリッシュの命を案じていたのかもしれないしボスの本当の狙いは知らされてなかったのかもしれない」
「でもどうする?ここにあるように護衛はひとりだけだ。まさか君がついていくなんて言い出すんじゃあねぇだろうな?アデレード」
「護衛はあなたよ、ブチャラティ。私はトリッシュの影の中へ入る。それを許してくれる?」
「君がトリッシュの影に?」
「私のシャドウ・デイジーなら影の中へ入ってしまえば呼吸も心拍も匂いも感知されない。トリッシュくらいの身長なら私にも入れるし彼女がもし何処かへ連れ去られたり危害を加えられたりしても私が影の中にいればすぐに対応できるわ」
「……分かった。しかし君がボートにいないと知られるのはまずい」
「それに関しては既にひとつだけやり方があるわ」
アデレードはそう言ってブチャラティの傍を離れ、ソファに座るアバッキオの隣へ腰を下ろした。
そのまま彼の肩に頭を凭れさせて寄りかかる。
「おい、アデレード」
「……やっぱりレオーネの隣は居心地がいいわ」
気まぐれな従姉の行動にアバッキオはブチャラティからの冷ややかな視線を向けられながら何なんだよ、とボヤいた。
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