▼42:指令とベッリーナ

ローマ駅の目前まで来たところでベィビィ・フェイスはバイクを停めた。
後ろに乗っていたアデレードに振り向いて言う。

「ココマデデス、アデレード」

「Grazie,ベィビィ・フェイス」

「メローネ、目的地ニ到着シマシタ。……メローネ?」

「どうかしたの?」

「笑ッテイマス」

「?メローネが?」

「Si.」

ベィビィ・フェイスに言われてアデレードが亀の中を覗くと、確かにメローネが剥き出しの腹を抱えて笑っていた。
アデレードが再度上から声を掛ける。

「メローネ」

「あ、ああ。着いたのか」

何がそんなにおかしいのかひーひーと言いながらメローネは亀から出てきた。

「あー傑作だ」

「そんなに亀の中は楽しかった?」

「ブチャラティのヤツ、あんな真面目なツラしてデリカシーがないんだな」

「何のこと?」

「娘がトイレに行きたいって言い出したんだ。そしたらブチャラティがさ、何て言ったと思う?押し入れの中の床にジッパーつけて、そこをトイレにしたなんて言うんだぜ?極めつけに亀が栄養にするかもしれないと来たもんだ!これには娘も理解出来ずに困惑するしそんな彼女のことなんかブチャラティはお構い無しだ。アイツ、女ってもんが解ってないんじゃあないのか? 流石の俺もこれには驚かされた」

ペラペラと興奮気味に早口で話すメローネをアデレードは手で制して、ローマ駅の灯りを指差した。

「ローマに着いたわよ」

「ん?ああそうか。ベネ。それじゃあギアッチョに電話する」

アデレードはメローネと場所を入れ替わるように亀の中へ入っていく。椅子に座るトリッシュへ近付いた。

「トリッシュ、トイレなら外にあるわ」

「アデレード、外は危険だ」

「私がついていくわ。大切な護衛対象に無理をさせないで」

止めようとするブチャラティにアデレードは首を振って拒否する。先程メローネに大笑いされたばかりのブチャラティは解ったと答えた。亀はジョルノが見ていることになった。
三人が外へ出ると、ジョルノはメローネから亀を受け取り、アデレードはトリッシュと共に公衆トイレへ入る。

「中までついてこなくていい、なんて今度は言わないわよね?」

「言わないわよ」

「Bene.ドアの前に立つけれど構わないかしら」

「ええ」

カプリ島で出会った時も今と同じことをした。トリッシュもあの時アデレードに取った態度を思い出したのだろう。居心地悪そうにしつつも少し吹っ切れた様子だった。
出てきたトリッシュの顔を改めて見れば、顔色も僅かに戻っている。

「少しは眠れたのかしら?」

「さっき、あのメローネって人が亀の中に来てから寝ちゃったの。深い眠りにつけたからそれですっきりしてるのかも」

「……そう。今ローマだからあともう少しの辛抱よ」

「そう」

アデレードはトリッシュが眠ったという事実にメローネが何かしたのだと察した。その何かも大体検討がつく。内心やれやれと溜め息をつくが、今はメローネを責めている場合ではない。
トイレから戻ると既にメローネたちの姿はなく、亀を持ったジョルノだけが立っていた。

「メローネはもう行ったの?」

「ええ。あの人、変わってますね」

「そうね」

「でも、あの人と話せたお陰でヒントをもらいました」

「ヒント?何の?」

「また今度ゆっくりと。今はトリッシュを中へ」

「Si.」

アデレードとトリッシュが亀の中へ入るとミスタとフーゴが入れ違いに亀から出ていく。車を調達するらしい。
パソコンに向き合っていたブチャラティがアバッキオを呼んだ。
届いていたボスからの指令の中でアバッキオのムーディ・ブルースを指定する内容があった。
書かれている通りにアバッキオはダイニングチェアーの傍でムーディ・ブルースを10時間前に巻き戻した。
アバッキオのスタンドであるムーディ・ブルースがそのつるりとした身体をキュルキュルとテープを巻き戻す音を立てながら変化させていく。
次第にそれはとある人物の姿になった。

「あれ?見たことあるじじいだな。誰だっけ?」

ナランチャが変化後のムーディ・ブルースの姿を指差す。

「幹部のペリーコロさんだ」

ブチャラティが答える。トリッシュを一番最初に彼らのところへ連れてきた人物である。恐らく亀を駅のホームに置いたのも彼だろう。
そう話しているうちにペリーコロが話し始めたので皆じっと黙って聞いた。
この方法を取った理由から始まった話しはボスへのトリッシュの引き渡し方法を語り始めた。

「トリッシュがヴェネツィアに無事着いたなら、この彫刻のところへ行き像の中の“OA-DISC”を手に入れよ!DISCの中には受け渡し場所がデータ入力されている」

「なっ、なんだッ!燃やし始めたぞッ!」

「証拠は残さないらしい」

「慌てるな。アバッキオ、一時停止しろ!」

ブチャラティがアバッキオに指示を飛ばし、ムーディ・ブルースを一時停止させる。燃えかかった写真を見れば、国鉄サンタ・ルチア駅前の像だった。

「どうやって安全にトリッシュが父親のボスと会うのか……最も重要なのはその点だ!何よりも優先させなければならない事だ!」

ペリーコロは再び語り始め、何ひとつ証拠は残せないと言うと懐からピストルを取り出した。
アデレードは咄嗟にトリッシュの目を手で塞ぐ。彼女は見なくていいものだ。
ガァンッ!という音が響いてペリーコロが拳銃自殺すると、ムーディ・ブルースは本来の姿に戻っていく。
幹部の末路と最終指令に一同は胸が早鐘につかれて止めることが出来なかった。




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